欧州で極左過激派グループの動きが再び活発化してきた。クリスマス・シーズンにイスラム過激派テログループのテロを警戒してきた欧州で23日、小包爆弾がイタリア・ローマのスイスとチリ両大使館で爆発し、2人の負傷者が出たが、イタリアの極左過激派グループ「非公式な無政府主義者連盟」(FAI)が犯行声明を出し、そこで「今後も破壊活動を実施していく」と宣言している。FAIは昨年12月のミラノで起きた爆弾事件でも犯行声明を出している。イタリア警察当局は無差別テロ事件として警戒を強めている。
 それに先立ち、ギリシャで先月、アテネのスイス大使館などに爆発物入りの小包が届いた他、ギリシャからサルコジ仏大統領、ベルルスコーニ伊首相、メルケル独首相など宛てに同じ様な爆弾小包が届けられるという事件があったばかりだ。例えば、独連邦首相官邸に11月2日、爆発物の入った小包が見つかり、警察の爆発物処理班が処理している。
 また、独日刊紙ターゲスシュピーゲル紙(電子版12月19日)によると、極左過激派雑誌インテリム(Interim)の最新号は「アンチ観光業キャンペーン2011」計画を掲載し、外国人旅行者をターゲットとした過激な活動を呼びかけている。
 独連邦憲法保護局は極左過激主義について「その政治的言動は革命的マルクス主義か無政府主義的世界観に基づいている。彼らは現行の国家や社会秩序の代わりに社会主義的、共産主義的システムか、無支配者の無政府社会を追及している」と分析している。ちなみに、同国で極左過激派によると見られる暴力件数は09年度は1096件で、前年度の701件から急増した。
 欧州で極左過激派グループが再び活発化してきた背景について、イラク出身の中東テロ問題専門家アミア・ベアティ氏(Amir Bayati)は「欧州の極左過激派グループは旧ソ連邦の崩壊後、資金源を失い、急速に弱体化していったが、ここにきてイスラム・テログループから資金提供を受けて活動を活発化してきている。主要資金源はサウジアラビアのワッハープ派で、彼らはムスリム同胞団を支援し、そこから欧州の極左過激派にも資金が流れている。イスラム過激派と極左過激派は反帝国主義という名目で手を結んできたので、来年はテロ活動が拡大する危険性がある」と分析している。