世界でイエスの生誕を祝うクリスマスの25日、「イエスはいつ生まれたか」というコラムを紹介することを悪く受け止めないでほしい。
 世界の出来事はイエス・キリストが生まれた日を境に、イエス生誕前を「紀元前」、その後を「紀元後」としてきた。それに基づき、「今年は(紀元後)2010年」ということになる。
 ところで、イエスは2010年前の12月25日にユダヤのベツレヘムで本当に生まれたのだろうか。歴史家たちは「確かではない」という。すなわち、正確な「イエスの誕生日」は分らないというのだ。
 しかし、聖書の記述や当時の歴史書、天体の星座の動きなどから判断して、「イエスは紀元前4年から紀元後6年の間に生まれたのではないか」といった推測が今日、もっと有力な説だ。
 オーストリアのカトリック通信が「イエスはいつ生まれたか」というタイトルで興味深い記事を報じていたので、以下、その概要を紹介したい。

 新約聖書「ルカによる福音書」によれば、イエスはヘロデ王の支配時代に生まれたという。ヘロデ王の治世は紀元前40年から4年の期間だ。ということは、イエスは遅くとも紀元前4年には生まれていなければならない。
 同福音書によると、「イエスはローマ皇帝アウグスト(Augustus)の治世時代に生まれたというが、同皇帝の治世は紀元前27年から紀元後14年の間だ。ただし、クレニオがシリアの総督だったのは紀元後6年だ。ヘロデ王の治世時代と一致しない。
 「ルカによる福音書」によると、ローマ帝国は人口調査を実施したと記述されているが、アウグスト時代にはそのような調査は実施されず、シリア地域の併合時の紀元後6年から7年の間にユダヤで行われたのだ。
 「ルカによる福音書」も「マタイによる福音書」も「イエスがヘロデ時代に生まれた」と記述している。マタイでは星座の話が出ている。その内容が実際起きた現象かは不明だが、その現象は紀元前7年から紀元前4年の間だ。この期間、3回、木星と土星の大接近があったというのだ。
 ちなみに、独天文学者のヨハネス・ケプラー(1571〜1630年)が「紀元前7〜6年の間で木星と土星の大接近があった」と報告している。中国の古文書によると、紀元後5年、やぎ座に一つの彗星が出現した、という報告もある。
 最近では、独天文学者のステファン・ポーラー氏が「イエスは紀元前2年か紀元前3年に生まれた」と主張している。その理由として、「イエスが誕生した当時のベツレヘムの星座の動向」を根拠としている。
 同氏は「紀元前3年8月12日、木星は金星と最接近し、両惑星は目で区別ができないほどになった」と説明、イエスの生誕に呼応するように、天対の動向に異変が目撃されたというのだ。古代時代から偉人の出現時には天体の異変があるという説があるが、その真偽は不明だ。

 いずれにしても、イエスの生誕年は「ヘロデ治世の後半」とみていいかもしれない。なお、生誕日では、イエスはユリウス暦4月7日生まれ、という説もあることを付け加えておく。