2010年もあと10日余りとなった。そこで欧州の北朝鮮動向をウオッチしてきた立場から、本年度の総括を書いてみた。
北朝鮮は過去、欧州を舞台に核関連器材から金正日労働党総書記用の高級品(贅沢品)まで、さまざまな物品を調達してきたが、国連安保理の対北制裁決議の採択後、欧州を拠点とした北の調達が難しくなってきた。換言すれば、欧州での「北の調達時代」が終わりを迎えている、ということだ。
「高級品の調達」といっても、それが金総書記の権力掌握用の武器として利用されてきたという事実を考える時、欧州での調達が難しくなってきたという状況は、金総書記の権力掌握にも影響が出てくるだろう。その意味で大きな出来事だ。
欧州を舞台に北朝鮮は過去、核関連器材だけではなく、さまざまな高級品、贅沢品も調達してきた。例えば、独メルセデス・ベンツ車(Sクラス)、フォルクスワーゲン車、高級ワイン、高級ヨット、ピアノなどを平壌に送ってきた。国連の対北制裁決議が発効されてからは、北の調達工作は不法外国貿易と見なされ、欧州各国当局の監視下に置かれたため、次第に困難となってきた。
ところで、欧州を舞台に過去、調達人として活躍してきた北の人物として、少なくとも3人の名前を挙げることが出来る(「北朝鮮の3人の男たち」2010年3月10日参照)。
1人は尹浩鎮(ユン・ホジン)氏だ。核専門家(元国際原子力機関担当の北外交官)であり、核関連器材などを調達してきた人物だ。尹氏は現在、南川江貿易会社(ナムチョンガン、原子力総局の傘下企業で核関連機材の調達会社)の責任者だ。ドイツ企業からウラン濃縮施設で使用する遠心分離機用のアルミニウム管を密輸入しようとしたが、発覚して失敗したことがある。国連安保理の対北制裁(昨年7月)の個人制裁対象者の5人の中に入っている。
2人目は権栄録(Kwon Yong Rok)氏だ。同氏は昨年、オーストリアのヨット貿易会社を通じてイタリアのヨット製造会社から金総書記用の高級ヨット(1300万ユーロ相当)を密かに注文したが、オーストリア銀行の通達が契機となって発覚し、取引は水泡に帰した。その結果、権氏はオーストリアのヨット会社と共にオーストリアの検察庁から国連安保理の対北制裁1718号違反と外国貿易法違反で起訴された。
ウィーン地裁は今月6日、対北朝鮮贅沢品禁輸などを明記した国連安保理対北制裁決議と外国貿易法の違反(無承認輸出)でオーストリアのヨット貿易会社の社長に対し、有罪判決を下したばかりだ(権氏は北に帰国し、不在裁判となった)。
3人目は北朝鮮人民軍元大佐であった金正律氏だ。オーストリア、ドイツを中心に金ファミリーへの高級品や武器関係の機材などを調達してきたが、金日成主席が死去した1994年、脱北を決意しオーストリアに潜伏。今年3月、自身の歩みを告白した自叙伝を発表し、独裁者金父子を批判した(「脱北者・金正律氏の決意」(10年3月5日参照)。
3人の調達人の内、一人は脱北し、一人は国連個人制裁対象者リストに入り、もう一人は不法貿易と国連対北制裁決議違反の容疑で起訴された身だ。3人とももはや海外に出国できなくなった。すなわち、3人の調達人はその使命をもはや果たす事ができなくなったわけだ。
もちろん、北朝鮮は今後も核関連器材や金総書記用の高級品の調達工作を続けていくだろうが、中国企業との連携を深めていかざるを得ないだろう。それは同時に、北朝鮮の中国依存を一層、深める結果となる。
北朝鮮は過去、欧州を舞台に核関連器材から金正日労働党総書記用の高級品(贅沢品)まで、さまざまな物品を調達してきたが、国連安保理の対北制裁決議の採択後、欧州を拠点とした北の調達が難しくなってきた。換言すれば、欧州での「北の調達時代」が終わりを迎えている、ということだ。
「高級品の調達」といっても、それが金総書記の権力掌握用の武器として利用されてきたという事実を考える時、欧州での調達が難しくなってきたという状況は、金総書記の権力掌握にも影響が出てくるだろう。その意味で大きな出来事だ。
欧州を舞台に北朝鮮は過去、核関連器材だけではなく、さまざまな高級品、贅沢品も調達してきた。例えば、独メルセデス・ベンツ車(Sクラス)、フォルクスワーゲン車、高級ワイン、高級ヨット、ピアノなどを平壌に送ってきた。国連の対北制裁決議が発効されてからは、北の調達工作は不法外国貿易と見なされ、欧州各国当局の監視下に置かれたため、次第に困難となってきた。
ところで、欧州を舞台に過去、調達人として活躍してきた北の人物として、少なくとも3人の名前を挙げることが出来る(「北朝鮮の3人の男たち」2010年3月10日参照)。


ウィーン地裁は今月6日、対北朝鮮贅沢品禁輸などを明記した国連安保理対北制裁決議と外国貿易法の違反(無承認輸出)でオーストリアのヨット貿易会社の社長に対し、有罪判決を下したばかりだ(権氏は北に帰国し、不在裁判となった)。

3人の調達人の内、一人は脱北し、一人は国連個人制裁対象者リストに入り、もう一人は不法貿易と国連対北制裁決議違反の容疑で起訴された身だ。3人とももはや海外に出国できなくなった。すなわち、3人の調達人はその使命をもはや果たす事ができなくなったわけだ。
もちろん、北朝鮮は今後も核関連器材や金総書記用の高級品の調達工作を続けていくだろうが、中国企業との連携を深めていかざるを得ないだろう。それは同時に、北朝鮮の中国依存を一層、深める結果となる。