ロシアで現在、全ロシア国勢調査が実施中だが、その質問欄に「所属宗教」を問う欄がない。通常の国勢調査では、政府が国民の宗教状況を把握するために「あなたの宗教は何か」という欄がある。
 ロシア正教会最高指導者キリル総主教の担当官は「ロシア政府は、宗教が国内で拡大している事実が明らかになることを恐れている」と、その理由を説明している。
 前回の国勢調査は2002年に実施された。質問事項は、性別、生年月日、婚姻状態、家族構成、出生地、国籍、民族、教育水準などで、ロシア人とロシア居住外国人も対象となった。この年の質問欄にも「所属宗教」を回答する欄はなかった。
 旧ソ連邦時代、「宗教はアヘン」として揶揄され、信者は2等国民扱いをされてきた。しかし、冷戦時代が終焉し、共産党政権下で癒着してきたロシア正教会が次第にその勢力を回復。最近では“宗教のルネッサンス”と呼ばれるように、国民の間で宗教への関心が高まってきている。
 そこで国勢調査で「所属宗教」欄を設けた場合、宗教人口が急増していることが一目瞭然となる。また、チェチェン人過激派テロに頭を悩ますロシアにとってイスラム教徒の増加が明らかになることは治安問題上、あまり芳しくない。そこで厄介な「所属宗教」欄を削除した国勢調査となった、というのが実情かもしれない。
 また、02年の国勢調査では、チェチェン共和国の人口が推定より多かったことから虚偽申告が疑われたほどだ。多民族を抱えるロシア連邦では国勢調査も非常に政治的色合いが帯びてくるわけだ。
 なお、アジア・ニュースによると、ロシアの人口は今後40年間で1億人以下に収縮し、人口の半分はイスラム教徒(スン二派が中心)によって占められると予想されている。
 人口減の理由として、(1)出生率の低下、(2)アルコール中毒の拡大、(3)中絶の拡大、等が挙げられている(同国では04年以来、中絶件数が出産件数より上回ってきた。約160万件の中絶件数に対し、約150万人の出産件数だ)。