国際原子力機関(IAEA)第54回年次総会で中東諸国は議題20「イスラエルの核能力」に対し、前回と同様に決議案を提出した。ここでは総会最終日に討議予定の議題20の決議案を先駆けて読者に紹介する。決議案内容は当日、一部修正されたり、議長声明に取って代わられるかもしれないが、読者に中東諸国の見解を紹介したい。

 (同決議案は21日現在、アルジェリア、バーレーン、エジプト、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モーリタニア、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦、イエメンの18カ国が共同提案国)

 年次総会は……

 ……年次総会で採択された決議、特に、この問題で第53回年次総会が採択した決議と議長声明を想起し
 ……イスラエルに対しその核関連施設をIAEAの核査察協定に置くよう求めた国連安保理決議487(1981年)の想起も求める。
 ……1995年のNPT再検討と拡大会議で採択された中東に関する決議を思い出して欲しい。そこで中東地域に非核査察の核関連施設の存在を懸念している。
 ……イスラエルを除いて全ての中東諸国がNPTの加盟国という事実を歓迎した2000年のNPT再検討会議を想起し、2010年の再検討会議では、中東でのNPTの普遍性を実現するためには、イスラエルのNPT加盟とその核施設をIAEAの包括的核査察協定下に置く事の重要性を確認したことを想起、
 ……NPTに加盟し、地域の全ての核施設をIAEAの包括的核査察協定下に置くことが、中東地域の核フィリー地帯の設置のためには不可欠な事だということを認識し
 ……核フリー世界への最近の国際的イニシャテブを歓迎する。


 1)中東地域の安全と安定にとって核拡散で生じる脅威に懸念を表明
 2)イスラエルの核能力に懸念を表明、同国がNPTに加盟し、全ての核関連施設をIAEAの包括的核査察協定下に置く事を要求
 3)IAEA事務局長にはこの目的を実現するために懸念国と連携を取ることを要求
 4)同議題を今後とも継続することを決め、事務局長が理事会、第55回年次総会で決議履行に関する報告をするよう求める。

(同決議案の内容は前回の年次総会のそれと酷似している)


 参考までにイスラエル側の返答を紹介しておく。イスラエル原子力エネルギー委員会のシャウル・ホレフ事務局長(Shaul Chorev)は21日、中東アラブ諸国の批判に対し返答している。

 1)NPTに加盟することを要求するが、イラン、イラク(フセイン時代)、シリア、リビアの4カ国はNPT加盟国だが、その国際義務を無視して未申告の核関連活動を行ってきたことが明らかになっている。NPTメンバーという覆いに隠れて核兵器の製造を目論んでいる。すなわち、NPT加盟が即、中東の安全、安定を保証するものでないことを明確に実証している。

 2)わが国はIAEAのMESA国メンバーだが、中東アラブ諸国はわが国の帰属を拒否している。一国の主権と権利を認めない中東アラブ諸国に取り囲まれたわが国の安全こそ脅かされている。イスラエルの権利が否定されている中で、どうして大量破壊兵器フリー地帯を設置できるだろうか、

 3)わが国への批判は、国際社会の関心を危険な核拡散の真なる挑戦から逸らすための戦略だ。


【短信】

   不法な核・放射性物質の取引件数

 国際原子力機関(IAEA)が22日、記者会見で明らかにしたところによると、1993年から2009年12月までに確認された核・放射性物質の不法な取引総件数は1773件だった。
 IAEAは1995年、「不法な核関連物質の取引」対策と「核物質の安全強化」のため、核関連物質の不法取引に関するデータベース(ITDB)を設置し、「不法取引と他の未公認活動の不祥事に関する情報システム」を構築してきた。同システムに今年9月現在、111カ国が加盟している。
 IAEA関係者によると、1773件の核関連物質、放射性物質の不法取引に関係した不祥事(確認済み)のうち、351件は未公認の核関連物質の所有、不法な取引と使用、それに関連した犯罪活動だ。その内、15件は高濃縮ウラン(HEU)やプルトニウムが関与していた。
 また、500件は核・放射性関連物質の「窃盗と損失」した不祥事だ。また、870件は他の未公認な活動だ。
 ちなみに、昨年7月から今年6月の期間に222件の不祥事がITDBに既に報告されている。その内、21件は不法な核関連物質の所有とそれに関連した犯罪活動、61件は窃盗と損失、140件は未公認の活動だ。なお、この期間、5件はHEU,ないしはプルトニウムが関与していた。
 ちなみに、トレントとしては、核・放射性物質の「不法な所有、取引件数」は1994年をピークに下降傾向にある一方、核関連物質の「窃盗や損失件数」は2006年をピークに減少、「他の不法な活動件数」は2000年に入って増加傾向にある。