北朝鮮で28日、「党最高指導機関選挙」のため歴史的な朝鮮労働党代表者会が開催されるはずだ。一旦、平壌に上京した地方の党代表者も帰郷した後、再び旅路の準備をしなければならない。
 参勤交代ならば2度も上京すればかなりの出費となる。謀反者にとって重荷だが、都の殿様にとっては好都合だ。北朝鮮の場合はどうだろうか、と考えていた。
 その時、「そういえば彼はどうしているだろうか」という思いが突然、湧いてきたのだ。「彼」というと、かなり知り合いの感じを与えるが、当方は彼とは一面識もない。「彼」とは金正哲氏のことだ。金正日労働党総書記の次男で今月25日、29歳の誕生日を迎えるはずだ。「はずだ」と書いたのは、確認が取れないからだ。「正哲氏がいま、何をしているのか」「ひょっとしたら、亡くなってはいないか」など、いろいろな推測が飛び出してくるが、ある意味で当然かもしれない。
 韓国メディアの情報では、正哲氏は「女性ホルモン過多分泌症」に悩んでいるといわれ、健康問題が指摘されて久しい。
 金総書記の料理人を13年間務めた藤本健二氏はその著書「金正日の料理人」(扶桑社)の中で「金正日は、正哲王子のことを、『あれはダメだ。女の子みたいだ』と、よく言っていた」と紹介している。また、正哲氏がバスケットボールが好きなうえ、映画「マトリックス」が大好きなこと、高級車ジャガーを運転していたこと、などを伝えている。
 いずれの情報も不確実性は払拭できない。正哲氏について知られていることは、(1)スイスのインターナショナルスクールに偽名で留学していたこと、(2)2006年6月、欧州を訪問し、エリック・クラプトンのファンでコンサートを何度も訪れたこと、ぐらいであろうか。
 金総書記には3人の息子がいる。後継者としては3男の正銀氏が決定したという。しかし、訪中したカーター元米大統領によると、中国の温家宝首相が「金総書記が正銀氏の後継者問題について『西側の間違った噂』と否定した」という情報が流れてきたばかりだ。
 ということは、後継者レースはまだ終了していないのかもしれない。日本密入国問題(2001年5月)でハンディを背負う長男の正男氏を除くと、俄然、正哲氏が急浮上してくる。ただし、ここでも「正哲氏は政治に関心はなく、後継者になる意思はない」という情報が昔、流れていたことを思い出す。
 大方の見方では、正銀氏の後継は「既定の事実」だが、正哲氏の誕生日の25日を間近に控えたこの時、正哲氏の置かれた立場や事情について考えてみても悪くないかもしれない。