国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は13日、冒頭声明の中で、理事会の重要な議題である「イラン、シリアの核問題」「イスラエルの核能力」等について、IAEAの見解を表明した後、「事務局職員の守秘義務」について初めて言及している。先ず、その個所の概要を紹介する。

 「私は、核査察に関する機密情報の保護問題で数カ国の加盟国からの懸念内容を書き留めた。全てのIAEA職員が機密情報の保護義務を履行することは非常に大切だ。私は最近、IAEAから出て行く職員に対しても守秘義務を引き続き継続する旨を署名しなければならない、といった修正をも含め、いくつかの追加処置を取った。私たちはまた、広報活動や職員と外部(メディアを含む)間の相互関係に関する職員規律なども再検討している。私は近い将来の理事会で、IAEAの情報安全体制に関する報告を理事会に提出する考えだ。それらの問題は非常に複雑であり、深く検討するためには時間が必要であることを理解していただきたい。私の前任者、エルバラダイ前事務局長によって開始された調査(09年核査察に間する機密情報をメディアにリークした問題)は完了した。調査では、リーク源の身元を判明できなかったし、事務局職員によって情報がリークされた証拠も見つからなかった」

 IAEAが機密情報の守秘に乗り出したことを歓迎したい。当方は過去、この欄で何度かIAEAのリーク問題を扱ってきた(「IAEA広報部は『外交筋』?」2009年11月20日)。
 査察関連情報のリーク源は事務局職員だけではない。機密情報を合法的に入手できる加盟国外交官による情報のリークが少なくない。例えば、イランの査察履行状況に関する機密情報が事務局職員から外交官に伝わり、そこからメディアにリークされるケースは過去、余りにも多かった。
 IAEAの歴史的なリーク事件はチェルノブイリ原発事故(1986年4月)に関するロシア政府の調査報告書が広報部長(日本人職員)から日本の朝日新聞記者にリークされた件だろう。当時のトップだったハンス・ブリクス事務局長は激怒し、リークした広報部長を更迭するなど処罰を下したことはまだ記憶に新しいことだ。残念なことだが、IAEAの広報史の最大の汚点といわれるリーク事件に日本人職員が関与していたのだ。
 日本人初のIAEAトップに就任した天野事務局長が、職員の守秘義務の強化に乗り出したということは、決して偶然のことではないだろう。
 この機会を利用して提案したいことがある。理事会前に駐IAEA日本代表部で特定の日本人記者たちを招きブリーフィングする慣例を廃止されたらどうか(それとも、全ての記者たちを招くかどちらかだ)。日本人外交官の一部が知り合いの記者に情報をリークするケースが過去、何度か生じているからだ。駐IAEA日本代表部全権大使を経験された天野事務局長はそのことを良くご存知のはずだ。
 なお、天野事務局長は13日の記者会見で「核査察関連情報の守秘は加盟国との信頼関係を維持する上でも非常に重要なことだ」と述べている。