国際原子力機関(IAEA)定例理事会は13日から5日間の日程でウィーンの本部で開幕する。同理事会では国連安保理決議、IAEA理事会決議を無視してウラン濃縮関連活動を継続する「イランの核問題」が焦点となるが、シリアの核問題の動向も注目される。ここでは天野之弥事務局長が6日、35カ国の理事国に配布した「シリアの核保障措置協定履行報告書」(5頁)をもとに、シリアの核問題のポイントを読者に紹介する。
 シリアがIAEAとの協力を拒否し続け、未解決問題の解明に進展がない場合、欧米理事国はシリアの核施設に対し特別査察の実施を要求してくることが予想される。IAEAはシリアに対し追加議定書の発効を求めている。

 報告書はA「ダイール・アルゾル施設」(Dair Alzour)とB「M N S R(小型研究炉)での活動」の2項目に分かれ、査察履行状況を記述している。

 A項の「ダイール・アルゾル施設」
 イスラエルが2007年9月に空爆したシリア北東部の核関連施設(ダイール・アルゾル施設)について、事務局長は08年6月2日、IAEAが米国から受け取った情報として「イスラエル空軍によって爆破されたダイール・アルゾル施設は核施設で、破壊された時は建設中で操業はしていなかった。そして北朝鮮の支援を受けて建設されていた」と理事国に報告した。
 それに対し、シリア側は「破壊された施設は核とは無関係の軍事施設だった」と反論し、北朝鮮との核協力も否定した。IAEAは「施設の形態やクーリング施設と連携されていた点などをみれば、破壊された施設は原子炉施設と酷似している」と主張した。
 IAEAは08年6月23日、ダイール・アルゾル施設を初めて査察した。ただし、破壊された施設に関する文書や同施設関連の3カ所のサイトへのアクセスは認められなかった。査察官か採集した環境サンプルから微量の人工ウランが検出された。同核物質はシリアがIAEAに提出した冒頭報告には明記されていない。それに対し、シリア側はイスラエルが発射したミサイルに付着していたと主張。IAEAは「その可能性は低い」と指摘し、「破壊された施設で核関連活動が行われた可能性が高い」と判断、「施設に関する情報提供と現地調査」を要求。それに対し、シリアは今日まで「施設が非核の軍事施設」と強調し、「IAEAとの間で締結した核査察協定は軍事施設の査察容認を義務つけていない」と主張。IAEAは「シリア側が協力しない限り、ダイール・アルゾル施設が原子炉であったか、非核の軍事施設だったか、判断できない」と報告している。

 B項の「M N S R(小型研究炉)での活動」

 IAEAは09年6月、「08,09年にダマスカス近郊のM N S Rで未申告の人工加工されたウラン粒子が検出された」と理事国に報告した。IAEAは同年10月、シリアに対して施設関連情報及の提供などを求める。シリア側は「M N S Rでの未報告のウラニウム硝酸塩製造に関連した活動から起因した」等と主張。IAEA側はM N S Rへの査察など要求しているが、シリア側から協力を得られない状況が続いてきた。ただし、今月3日、ウィーンでの会合で未解決問題を解明するための活動計画を作成することで合意した。