9月に入ると途端に忙しくなるのはどの職場でも同じかもしれないが、国連記者たちも例外ではない。7月下旬から8月末までは静かだったが、9月に入ると国際原子力機関(IAEA)の定例理事会が13日から、翌週の20日から第54回年次総会がそれぞれ一週間続き、その後、再び理事会が開かれる。国連記者にとって9月は文字通り“IAEA漬け”の月となる。
 そしてここ数年、イランの核問題が理事会の焦点となってきた。新鮮な点は、これまで議題すらならなかったイスラエルの核問題がアラブ理事国の強い圧力もあって議題化してきたことだろうか。
 ところで、イランの核問題を考える時、2点に注意を払わなければならない。第一は「ホメイニ師の遺訓」だ。イラン革命を主導したホメイニ師は生前、「大量破壊兵器を製造してはならない」と述べていたという。
 イラン側は核問題を追求する欧米諸国に対して、「わが国は核兵器を製造しない。これはホメイニ師の遺訓だ」と説明し、「われわれの核計画は平和利用が目的だ」と、繰り返し主張してきた。
 イラン最高指導者のハメネイ師はホメイニ師の弟子であり、後継者だ。アハマディネジャド大統領にとってもホメイニ師は大先生だ。同師の遺訓は権威があり、無視できない。
 と、考えてきたが、肝心のホメイニ師が亡くなる1年前の1988年、「イラク戦争に勝利するためには核兵器が必要だ」という内容の書簡を送っていたことが判明したのだ。
 この書簡が事実とすれば、「ホメイニ師の遺訓」はイラン側の弁明に過ぎず、「内容のない嘘」だったということになる。
 「嘘」はイスラム教の教えでも許されない不義だ。ところがそうではないらしい。第二だが、イスラム教の教えには「タキーヤ」(Taqiya)という概念があるのだ。「タキーヤ」とは、イスラム教徒が自身の信仰ゆえに生命の危険にさらされた場合、「自分の信仰を隠しても赦される」という内容だ。
 ただし、「タキーヤ」について、イスラム教グループによって見解が一致していない。タキーヤを認めているのはシーア派だけであり、スン二派は認めていない。イランはシーア派のイスラム国だ。
 欧米から強い圧力を受けるイラン指導者たちが「平和利用と弁明する一方、イスラム諸国で初の核兵器を密かに製造し、イスラエル、米国ら異教徒に対抗する」と考えている可能性があるわけだ。
 13日から始まるIAEA理事会で欧米理事国はIAEA担当のソルタニエ・イラン大使を掴まえ、「イランは核問題でタキーヤ(真意を秘匿)しているのか」と問い詰めるべきだろう。もちろん、ソルタニエ大使がその時もタキーヤを駆使する可能性は排除できないが……。