北朝鮮最高指導者の金正日労働党総書記は先月26日から中国を非公式訪問したが、吉林市では現地のカトリック教会を訪問していたという。バチカン放送が2日、伝えた。
 米国務省が毎年発行する「宗教の自由報告書」では、北朝鮮は世界最悪の宗教弾圧国にランクされて久しい。その国の独裁者が外遊先とはいえ、カトリック教会に足を踏み入れていたというのだ。北朝鮮当局が近い将来、宗教政策を緩和する兆しではないか、といった楽観的な憶測も流れ出した。
 それに対し、韓国カトリック教会の広報官は「金総書記の教会訪問を過大評価することは危険だ。金総書記は父親の金日成主席が2年間通った東北地方の吉林市にある毓文中学校を訪問したが、その枠組みで同市の教会にも足を向けたのだろう」と説明し、金総書記の教会訪問を冷静に受け止めている。
 ちなみに、北朝鮮では昨年6月、聖書を配布したという理由で1人のキリスト信者が公開処刑された。同国では法的には「信仰の自由」は保障されているが、現実は最悪の弾圧国だ。迫害されるキリスト者救援組織「オープン・ドアーズ」(本部・米カリフォルニア州サンタアナ)の最新報告書によると、7万人のキリスト者が国内30カ所以上の労働収容所に送られている。
 北朝鮮の首都、平壌はかつて“東洋のエルサレム”と呼ばれ、キリスト教活動が活発な時代があったが、故金日成主席が1953年、政権を掌握して以来、現在まで宗教者への弾圧は続いている。その北の宗教政策が改善されるといった兆候は、残念ながら、今のところない。
 それでは金総書記はなぜ、訪問先の吉林市のカトリック教会を訪ねたのか。金総書記の今回の訪中は、故金主席の聖地巡礼と共に、中国の地方都市の経済発展状況を視察することにあったといわれる。とすれば、金総書記の教会訪問も少なくともその目的と合致していなければならない。
 ここまで考えてくると、結論は近い。当方は先月、「中国で現在、2300万人以上のキリスト教信者がいる。中国歴史でもこのようにキリスト信者が増えたことはなかった」という中国社会学アカデミーの調査結果を紹介したが、金総書記は中国のキリスト教会の発展を肌で感じたかったのだ。なぜか。「経済の自由化促進がもたらす宗教の台頭」というテーマを考えていたからだ。
 そこで、金総書記は中国の地方都市で近代的工場を視察するように、吉林市の教会に足を踏み入れていったのだ。