2001年9月11日の米国内多発テロ事件以来、欧米キリスト教社会を中心に「イスラム・フォビア」なる社会学用語が定着していった。イスラム教やその信者に対し、恐怖、嫌悪感を意味する。その数年後、今度は「キリスト・ファオビア」なる用語が飛び出してきた。「イスラム・フォビア」と同様、キリスト教やその信者に対する不当な恐怖感を意味する。
 当方はこのコラム欄で「ドイツで席巻するテクノフォビア」(09年7月29日)を紹介した。最新技術への懐疑や恐怖感だ。このように、恐怖、嫌悪感を意味する「フォビア」(phobia)が多方面で頻繁に使われてきた。
 ところで「ホモ・フォビア」という言葉を読者の方はご存知だろうか。この新用語(?)を初めて使用したのは、ローマの聖トマス・アクィナス法王アカデミーのメンバーで、雑誌「神学的なもの」の発行人兼編集長だった独神学者ダビット・ベルガー氏(David Berger、42)だ。
 同氏は今年4月末、独日刊紙フランクフルター・ルンドショウとのインタビューの中で、「自分はホモ」と告白。その発言を受けてかどうか分らないが、同氏はこの度、法王アカデミーから除名されたのだ。28日付のフランクフルター・ルンドショウによると、アカデミー側は除名処分の理由を「ベルガー氏の言動がカトリック教義と一致しない点が出てきたから」と説明するだけで、同氏の「ホモ告白」には何も言及していない。
 ベルガー氏は独紙との会見で、「カトリック教会はホモ・セクシュアルに対し、偽善的で、信心ぶった態度を取っている。カトリック主義の中にホモ・フォビア傾向がセクトのような広がりを見せてきた」と批判している。ここで「ホモ・フォビア」という造語が使われている。
 一方、オーストリア教会のクラウス・キュンク司教はメディアとのインタビューの中で、「神学セミナーや修道院で同性愛者のネットワークが存在する」と指摘し、「彼らが教会や修道院で拡大、増殖していった場合、教会や修道院の存続が危機に陥る」と警告を発している。
 カトリック教会内の「ホモ・ネットワーク」にしろ、ベルガー氏が主張する「ホモ・フォビア」にしろ、バチカンは同性愛問題に対し曖昧な姿勢を取らず、明確な指針を表明すべき時だろう。