ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁のあるイタリアで宗教書籍の売上げが伸びているという。ミラノの保守紙ジョルナレが26日付で同国出版会社組合の情報として報じたものだ。
 同紙によると、2007年から09年の間で宗教書籍を読む読者数が10・1%増加したという。読者層は若い世代が増えている。年齢的に見ると、18歳から54歳が2000年、全体の読者数の44・2%を占めていたが、その割合が52・85に伸びた。ちなみに、宗教書籍の市場占有率は約13%、売上げ総額は2億6000万ユーロという。
 イタリアを含む欧州各地で聖職者の未成年者への性的虐待問題が発覚し、教会の信頼性が揺れ、宗教一般への懐疑心が高まっているにもかかわらず、宗教書籍を求める読者が増えてきた背景について、出版関係者は「宗教書籍の性格の変化がある。従来の神学的な著書から、家庭、倫理、心理学分野を宗教的、精神的観点から扱う文学のような宗教書簡が増えてきた」と説明する。要するに、堅苦しい教義中心の書籍から、具体的な日常生活をテーマとして精神的な価値を追求する書籍が増えてきた、というわけだ。
 読者が愛読する宗教書籍としては、修道院創設者エンゾ・ビアンキ著「幸福への道」、ヨハネ・パウロ2世との関係を綴ったヴァンダ・ボルタヴスカ著「友情日記」、アンドレア・トル二エリ著のローマ法王自叙伝「サント・スビト」などが挙げられている。もちろん、現ローマ法王べネディクト16世の著書は常にベストセラーだ。例えば、「ナザレのイエス」だ。変ったところでは、イタリアのトリノを本拠地とするサッカー・クラブ「ユベントス」のDF、レグロタリエ選手の「信仰で数百倍良く生きる」などがある。

 以上、オーストリア・カトプレスのローマ発の記事から紹介した。 

 私たちが生きている時代は一見、宗教から最もかけ離れた時代のようにみえるが、人々が「幸せ」を求める限り、宗教は人々の心を捉えていくのだろう。宗教書籍に人気が集まるのは、現代人がひょっとしたら「幸せではない」からかもしれない。