ウィーン市見本市会場で18日から開催されていた第18回「国際エイズ会議」が23日午後、全日程を終えて、閉幕した。
 世界193カ国からエイズ問題の専門家、医療者、エイズ患者の支援活動をする非政府機関(NGO)の関係者ら1万9300人が参加し、その体験や意見の交流を行った。
 会合では、HIV感染者が最新の治療を受ける権利を「人権」と呼び、その履行を求めていた。エイズ治療として、北米や西欧で1995年以来導入されているHAART治療( Highly Active Anti-Retroviral Therapy)がある。少なくとも3種の抗レトロウイスル薬の併用療法を通じてウイルスの増殖を抑え、エイズの発病を防ぐ。既に一定の効果は確認されているが、専門医不足や高価な薬剤などがネックで、全てのエイズ患者が同治療を受けることは難しい。そこで、両親からエイズを感染された子供たちを優先的に治療すべきだという声が聞かれた。
 また、エイズ感染の主要ルーツとなっている麻薬問題では、専門家たちがまとめた「ウィーン宣言」の中で、麻薬摂取者を犯罪人扱いし、逆にHIV感染を広める結果となっている従来の麻薬政策(War on Drugs)を変更し、「治療優先」の政策を取るべきだと助言している。
 会議場周辺には、NGO関係者が通行人にコンドームを配布していた。コンドームがエイズ感染防止の有効手段というわけだ。当方が取材届けをした時、赤い会議用バックをもらったが、その中にもコンドームが入っていた。
 大多数の会議参加者はエイズ感染者の救済のため、努力している。その熱意は当方にも伝わってきたが、なぜかもう一つ心に響かないのだ。
 会議参加者は「批判する前に、救うべきだ」という。その通りかもしれない。しかし、HIV感染は拡大し続けている。何かが欠けているからではないか、といった内省が必要な時ではないか。
 そこで批判を覚悟で当方の私見を述べたい。エイズは「結果」だ。それをもたらしたさまざまな原因がある。放縦な性関係、輸血問題、麻薬の注射針からの感染などだ。それらの中でも、性の問題が核だろう。そして原因への対応を真剣に考えなければ、対症療法に留まるだけだ。
 ウィーン会議ではエイズ対策費の増加や治療拡大に焦点が集まり、「性モラル」の啓蒙などには余り関心が払われていなかった。NGOグループの中には、「自由なセックス」を要求するプラカードを掲げていた関係者もいたほどだ。
 国連は2000年9月に開催されたミレニアム・サミットで、「21世紀における国連の役割」について検討し、世界中の全ての人がグロバール化の恩恵を受けることができるための行動計画を提示した「国連ミレニアム宣言」を採択したが、エイズ問題では2015年までにHIVの拡大をストップさせることをミレニアム開発目標に掲げたが、その実現の見通しは現状では厳しい。
 エイズ感染問題の多くは、純潔教育や「健全な家庭つくり」を通じて解決できる問題ではないか。コンドームの配布は感染を防ぐという意味で必要だが、エイズ問題を根本から解決することはできない。
 そのような意味から、宗教指導者は今後、国際エイズ会議にもっと積極的に参加し、医療関係者、エイズ専門家たちと連係しながら、その宗教的な観点からエイズ対策に貢献すべきではないか。