南アフリカで開催中のサッカーのワールド・カップ(W杯)でドイツ・チームが初戦の対オーストラリア戦で4−0と快勝した直後から、同国メディアでは早くも「今大会でドイツは優勝する」といった楽天的な予測が飛び交っている。
 メディアというものは無責任なものだ。大会前まで「ミヒャエル・バラック選手の負傷で中心選手を失ったわがチームは苦戦が予想される」「リーグでも活躍しなかったミロスラフ・クローゼ選手とルーカス・ポドルスキ選手をあえて起用するヨアヒム・レーヴ監督の作戦は成功しない」と苦言を呈してきた。それが初戦で活躍した選手はメディアが批判してきた両選手だったのだ。レーヴ監督の作戦が評価される一方、メディアの報道が如何に場当たりなものかを暴露してしまった。
 しかし、同国メディアだけではなさそうだ。メルケル連立政権のパートナー政党、自由民主党(FDP)のディルク・二ーベル経済協力相は「わが党が政権に参画している時はドイツ・チームはW杯で優勝する」と主張したのだ。1954年、74年、そして90年の過去3回の優勝は確かにFDPが政権に参加していた時だ。54年と90年はキリスト教民主同盟(CDU)との連立政権、74年は社会民主党(SPD)との連立政権だ。
 経済協力相の論理に従えば、FDPがメルケルCDU政権に参加している今回もドイツ・チームは優勝できるというわけだ。FDPはチャンピオン・メーカーというわけだ。同国有権者が昨年9月の総選挙で、6月の南ア大会のW杯を考えて同党を支持したわけではないだろうが、事実はその通りだ。
 しかし、事実は決して一つだけではない。94年と98年のW杯の時、FDPは政権に参画していたが、いずれも準決勝止まりだった。すなわち、同党が政権に参加していた時のW杯で優勝できなかったことがあったのだ。
 しかし、FDP政治家にとって、そんな事実はどうでもいいのだろう。過去3回のW杯優勝の時、たまたま、政権に参加していたという事実が全てなのだ。
 ドイツは18日、セルビアと対戦する。二ーベル経済協力相の予言によれば、ドイツ・チームは楽勝だが、果たしてどうだろうか。