5年ぶりに開催された核拡散防止条約(NPT)再検討会議は終了し、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効の重要性が明記された最終文書が採択された。いよいよ、CTBT条約発効への具体的な動きの番だ。
 ジュネーブの軍縮会議でCTBTが作成され、96年9月の国連総会で署名が開始された。6月末現在で、署名国182国、批准国153カ国、条約発効に署名・批准が不可欠の、研究用、発電用の原子炉を保有する国44カ国では35カ国が批准完了。未批准国は米国、中国、インドネシア、イラン、エジプト、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮の9カ国だ。インド、パキスタン、北朝鮮の3国は未署名。
 そこで以下、CTBTの運命を握る9カ国の近況を報告する。

 (1)インドネシア……マルティ・ナタレガワ外相は先月、CTBT条約に近い将来、批准すると表明した。具体的な批准日は未定だが、9カ国の中で最も批准が早い国とみられている。同国は1996年9月24日に条約に署名済み。

 (2)エジプト……条約には反対していないが、中東地域の非核化構想と関連しイスラエルの批准待ち。96年10月14日に署名済み。

 (3)中国……数年前から人民会議で批准問題を協議中と表明してきたが、本音は米国の批准待ち。米国が批准すれば、即批准予定だ。

 (4)イスラエル……中東の非核化構想とも関連。目立った動きはない。96年9月25日に署名済み。

 (5)イラン……イスラエルやエジプトの批准動向を注視する一方、米国の批准を見守っている。同国の核開発計画が平和目的であることを実証する最大の近道はCTBT条約の批准、といわれる。同国は96年9月24日に署名済み。

 (6)インド……パキスタンの動向と密接に連係。CTBTの会議にはオブザーバーとして参加。未署名・批准国。

 (7)パキスタン……インド次第。CTBT会議にはこれまで積極的に参加してきた。インドと同様、未署名・批准国だ。

 (8)北朝鮮……インド、パキスタンと同様、未署名・未批准国。6カ国協議の再開とも関連。他の8カ国が批准した後、CTBT条約発効問題を外交武器に利用する可能性有り。

 (9)米国……オバマ大統領はCTBT条約の早期批准を願っているが、共和党との関係もあって上院で批准が採決されるか不確か。明確な点は米国の批准は中国など他の未批准国に批准のドミノ現象をもたらす可能性が期待される。96年9月24日、署名完了したが、クリントン政権下の99年10月、米上院本会議が批准を否決した。