ローマ法王べネディクト16世は今月11日、バチカン法王庁にあるサンピエトロ広場で世界97カ国から集まった約1万5000人の神父を前に「神父の年」を閉じる最後の記念礼拝を行った。「神父の年」はべネディクト16世が昨年6月19日に制定したものだ。聖ヨハネ・マリア・ビアンネ神父の死去150年を機に、同神父の生き方を模範として神父たちの向上を図るのがその狙いだ。
 法王は1年間の「神父の年」が無事終わったことを神に感謝し、神父たちには「聖職者となった日を忘れることなく、汚れのない心で献身するように」と要請。その上で、「兄弟たちよ、一匹狼になってはならない。われわれ全ては神の名で連結された存在だ。結束した時、われわれは強いのだ。その時、愛と神の真理の証人となることができる」と述べた。
 法王は聖職者の未成年者への性的虐待問題にも言及し、「聖職者を憎む悪なる敵は、神父の年に未成年者に対して性的虐待を繰り返し、神の願いを蹂躙してきた聖職者の実態を暴露したのだ。われわれは犠牲者に心から謝罪し、神に許しを請い、2度と同じ過ちを犯さないことを誓わなければならない」と強調、懺悔と悔い改めを表明した。
 べネディクト16世は自身が呼びかけた「神父の年」に聖職者のスキャンダルが暴露されたことを恨むのではなく、「教会の純化の機会として受け止め、感謝していこう」と述べている。さすがに、世界11億人の信者の最高指導者だ。マイナスをプラスの機会に転じようというわけだ。
 9日から11日の3日間、バチカンでは世界から集まった神父たちとの礼拝や記念行事が挙行されたが、そこでは「聖職者の性犯罪」問題の他、「聖職者の独身制」や「宣教活動の強化」などがテーマとして報じられてきた。
 バチカン国務省長官のタルチジオ・ベルトーネ枢機卿は「教会にとって聖職者の独身制は不可欠だ」と強調し、神父たちに「独身制の維持」を求める発言をしている。同じベルトーネ枢機卿は4月、スペインのTVとのインタビューの中で「聖職者の独身制は有意義であり、実り豊かな教会の伝統だ」と独身制を評価する一方、「独身制も決してタブー・テーマではない」と述べ、独身制の再考の余地を示唆していた。
 なお、バチカンの年報によると、世界の神父数は2000年から08年の間で約1%増加し、約40万9000人だ。ただし、大陸によって、その増減は大きく異なっている。アジア大陸ではこの期間、約25%増加し、アフリカ大陸では約33%と急増している。一方、世界カトリック教会のエリート教会である欧州教会では約7%減少している。同時に、神父の高齢化が大きな問題となってきた。フランス教会では約1万4000人の神父の半数以上が75歳以上という調査結果が明らかになったばかりだ。