韓国の哨戒艦「天安」(1200トン級)が北朝鮮の魚雷によって爆破されたことが明らかになって以来、南北両国は準戦争状況下だ。相手の挑発があれば、「報復攻撃をする」と、双方が宣言している。
 朝鮮半島の緊張はこれが初めてではない。1955年の休戦条約が締結された後も、南北間は常に緊迫状況だった。これまで大きな軍事衝突がなかったこと事態が奇跡だ。
 ところで、戦争は経済発展にとっては最悪のシナリオだ。外国の企業や投資家は当然、紛争地域への投資を避けようとする。
 今回の南北間の緊迫状況は韓国経済にどのような影響を及ぼすだろうか。韓国の連合ニュースによると、韓国企画財政部は「北朝鮮リスクの実体経済への影響は制限的」と予測し、バンクオブアメリカ・メリルリンチも「南北間の緊迫は韓国経済に大きな影響はない」と楽観的に受け取っているという。
 ところで、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は現在、「南北間の衝突の経済的影響」について独自に現地調査を進めている。
 調査では、センセーショナルな報道が先行しやすい現地メディアの論調を総括するのではなく、ソウルに投資している現地企業関係者の生の声を集めることだという。
 そこで知人のウィーンのKOTRA関係者に電話で調査結果を聞くと、「これまでのところ全般的に冷静だ。状況を注視しているところだろう」という。企業側がパニックになり、ソウル市場から撤退するといった声はまったくなかったという。
 「韓国市場に進出している外国企業は既にさまざまな体験を持っている。彼らは今回の政治情勢も過去のそれと同様、大きな衝突はないだろうと受け取っている」と説明。一方、「これからソウルに進出を検討している潜在的な顧客の中には不安の声があることは事実だ」という。
 ソウルから流れてくる情報によると、偶発的衝突の危険性が高まってきている。今回の事態も北朝鮮から仕掛けられたものだ。北朝鮮国内の事情が不透明だけに、平壌の意図が読めない。例えば、欧州気鋭の北朝鮮問題専門家、ウィーン大学東アジア研究所のルーディガー・フランク教授はオーストリアの経済新聞とのインタビューの中で南北間の戦争勃発の危険性を予測しているほどだ。
 いずれにしても、同民族間で再び血を流し合うような事態が発生しないことを切に願う。