ローマ・カトリック教会バチカン法王庁福音宣教省長官イヴァン・ディアス枢機卿は先日、「3次元的な神父、宣教師が求められる」と語った。同枢機卿が表現した「3次元的(立体的)」という言葉の意味が良く分らないが、多分、「教え、規律、そして敬虔の徳を重視する聖職者」という意味が含まれているのだろう。
 明確な点は、ディアス枢機卿が「3次元的な聖職者像」を思いつきから発言したわけではないということだ。今年が「神父(司祭)の年」であること、そして、聖職者の未成年者への性的虐待事件が発覚し、聖職者のイメージが悪化している事を考えた上での表現だろう。
 ディアス枢機卿は「礼拝やサクラメントの時、聖人的な雰囲気を発信し、信者たちを救い主イエス・キリストと一体化させなければならない」と強調した上で、「全ての神父、キリスト者はDNAの中に宣教魂が刻み込まれていなければならない」と述べている。
 ところで、デイアス枢機卿は3次元の条件を満たした聖職者の実例として、ジョン・ヘンリー・ニューマン枢機卿(1801−1890年)の名を挙げている。ローマ法王べネディクト16世が9月の訪英の際、列福予定の聖職者だ。
 そこでニューマン枢機卿について少し紹介する。同枢機卿は英国国教会の聖職者だったが、44歳の時、ローマ・カトリック教会に改宗した聖職者だ。英国国教会のカトリック教会復帰を促進する「オックスフォード運動」の中心人物だった。ニューマン枢機卿は1879年、レオ13世から枢機卿に任命されている。
 デイアス枢機卿が提唱した「3次元的な聖職者」に一致するかどうかは分らないが、ニューマン枢機卿は19世紀の英国教会を代表する聖職者として知られてきた。
 ちなみに、列福されるためには、殉教したか、その聖職者が関与した超自然現象(奇跡)が実証されなければならない。バチカンによると、これまで一件、病人が同枢機卿の名前で痛みがなくなったという奇跡が報告されているという。それに対し、批判精神が旺盛な英国メディアは早速、「それは自然の治癒現象であって、奇跡ではない」といった記事を流している。いずれにしても、「3次元の条件を満たした理想的な聖職者」となる道は並大抵ではない。