独ローマ・カトリック教会司教会議は25日、フライブルクで開催した春季会議でイエズス会系学校などで発覚した聖職者(修道僧)の未成年者への性犯罪問題について協議し、聖職者の性犯罪防止の「4項目計画」(VierーPunkte−Plan)を採択した。


 以下、「4項目計画」の概要を紹介する。


1)真実の暴露
 未成年時代に性犯罪の犠牲となった者はその後、生涯にわたってその傷を抱え苦悶していく。先生や教育者が若き人間の信頼を傷つけ、裏切る。その犯罪人が聖職者の場合、問題はより深刻である。聖職者の性犯罪はその聖職目的に真っ向から反対する行為だ。われわれドイツ教会の司教たちは教会の兄弟たちによって行われた犯罪行為に強い衝撃を受ける。われわれは誤った配慮を持たず、犯罪の真摯な解明を望む。

2)基本ガイドラインの適応
 われわれは8年前(2002年9月26日)、聖職者の未成年者への性犯罪に対応する基本ガイドラインを採択した。その方針は全ての司教区に適応される。ドイツ修道会責任者も同方針を受け入れた。聖職者の性犯罪をもみ消したり、隠蔽することを阻止するものだ。犠牲者とその家族に心療治療など支援を提供し、各司教区の相談担当官は疑惑問題などで相談に乗る準備をする。同時に、早期に検察側に始動を求める。われわれは関係当局に対し万全の協力を惜しまない。


3)防止策の強化
 性犯罪を行った聖職者の聖職の再開許可を下す前に、われわれ教会側は公認された専門家の意見を求める。将来に同じことが生じないため、教会側は学校関係者や未成年者の教育担当官と連係を強化していく。
 ドイツ国内にも子供や青少年への性犯罪に対応する公共や民間の機関が多く存在する。教会側は「教会内での性犯罪防止」のためどのような対策が必要かをそれらの機関から学びたい。同時に、われわれ司教は犠牲者との対話を行い、どうしたら傷を癒すことができるかなどについて話し合いたい。
 専門家たちが指摘しているように、神父の独身制は、未成年者への性犯罪の主因ではない。独身制はそれを実施できる、必要な人間的、情的成熟を有するものにだけ課せられたものだ。性犯罪を防止するために慎重な神父教育が必要だ。だから、独身制が課せられた神父候補者へ心理的成熟を強化するため、これまで以上に支援を提供していく。


4)司教会議内の責任者任命
 トリーア教区のシュテファン・アッカーマン司教(Stephan Ackermann)を聖職者の性犯罪問題担当の司教会議特使に任命した。特使の職務を支援するため司教会議事務所内にオフィスを開設。同時に、教会内の聖職者の性犯罪に関する連邦全土にインフォメーションのホットラインを開く。



 この「4項目計画」を一読すると、独司教会議関係者が聖職者によって繰り返された未成年者への性犯罪に大きな衝撃を受けていることが分る。「4項目計画」が履行され、聖職者の性犯罪が再発しないことを願うが、残念ながら、聖職者の性犯罪は1979年代、80年代だけではない。今も行われている。性犯罪対策の指針が決定された後も多発しているテーマだ。
 第3項目で「専門家も指摘しているように、神父への独身制が性犯罪を誘発する主因ではない」と説明している。その背後には、揺らぐ「聖職者の独身制」を必死に堅持しようとする教会側の思惑が色濃く反映している。聖職者の独身制がその性犯罪の要因と認めた場合、教会という機関が致命的欠陥を内包していることを認めることになる。だから、絶対、回避しなければならないわけだ。
 「独身制はそれを堅持できる能力がある聖職者だけに課せられている」というが、それではオーストリア・カトリック教会最高指導者だったグロア枢機卿の性犯罪はどうなのか。彼は一神父ではなく、教会最高ポストの枢機卿だったのだ。枢機卿でも守ることができない独身制をどうして神父候補生にその堅持を要求できるか。
 改革や改善には痛みが伴うと共に、財政負担も増える。しかし、バチカン法王庁教理省長官を長く務めたローマ法王べネディクト16世も認めているように、聖職者の独身制は教義(ドグマ)ではないのだ。変えられる慣習だ。教会指導者がこれ以上「謝罪」表明を強いられない為にも、悪習は即変えるべきだ。