国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は17日の昼食時、ウィーンの国連職員レストランで女性スタッフと話していた。前事務局長エルバラダイ氏が国連職員レストランで食事をする姿を見たことがなかったIAEA職員たちは、遠巻きから好奇心溢れる目で新事務局長を見ていた。
 当方は食事を終え、記者室に戻り、友人記者に早速、「職員レストランで天野事務局長を見たよ。彼はスタッフと昼食をしながら、談笑していた」というと、友人は真顔で「エルバラダイ前事務局長は絶対、職員レストランで食事しなかったよ。事務局長室に食事を運ばせたからね。天野氏は事務局長というポストの重さをまだ認識していないのかもしれないね。しかし、もう少し時間が経過すれば、新事務局長も地位に相応しい対応をするだろう」という。
 当方は「天野氏は職員との交流を重視し、事務局長と職員間の壁をなくそうと努力している」として、職員レストランの天野氏の行動を密かに評価してきた。当ブログ欄で天野氏の職員レストラン出現をテーマにコラムを書いたほどだ。それだけに、友人の「地位の重さを知らない」という発言に少々驚いた。
 彼は「エルバラダイ氏は職員と交流したり、談笑はほどんどしなかった。だから、事務局長が職員に話かけたりすると、その職員は非常に感動したぐらいだ。彼はIAEA事務局長のポストに相応しく振る舞っていた。もちろん、少々王様のような傲慢さもあったがね」と説明しながら、「天野氏は事務局長前の生活様式で振る舞っているのかもしれないが、それは大きな間違いだ。ここでは、地位に相応しい振る舞いが求められているからね」と指摘した。
 友人の目からみたら、「天野事務局長はその地位の重さを測りかねている」といった状況に映るのかもしれない。「天野氏が事務局長室で食事を取るようになれば、地位に相応しい振る舞い」ということになり、事務局長として合格点を得るわけだ。日本人の当方の感覚とは少し違う。
 外国、特に、西欧のビジネス社会では地位を重視し、高給を得、他者から尊敬されるポストを得ようと奮闘する若きビジネスマンたちが少なくない。
 「大企業の社長が毎日、社員食堂で社員たちと一緒に食事するようになれば、社長の地位を目指して懸命に努力する社員が出てくるだろうか」
 友人の説明を聞きながら、「是非は別として、彼の見解は一理ある」と思わされた次第だ。