ストラスブールの欧州議会は先日、エジプトとマレーシア両国の「少数宗派キリスト者への迫害」を批判し、その改善を強く要求した。
 エジプトの場合、コプト派正教徒への迫害だ。同国南部ケナ県ナグハマディで今月6日夜、3人のイスラム過激派がクリスマス準備中のコプト派正教徒に機関銃を乱射し、7人の信者たちが死亡、多数が重軽傷を負うという事件が発生したばかりだ(参照「コプト派正教の『6項目』要求」2010年1月15日)。
 独ベルリン市やウィーン市など欧州各地でコプト派正教徒の「信仰の自由」を要求するデモ集会が開かれた。
 一方、マレーシアではクアラルンプール上級裁判所が昨年12月31日、キリスト者にも神を意味する「アラー」の使用を認める判決を言い渡したが、それを不服とするイスラム教徒が抗議デモや同国内の少数宗派キリスト教会への襲撃を繰り返している。
 欧州議会が採択した決意書によると、「エジプトとマレーシア両国政府はコプト派正教徒や少数派宗教団体の信仰の自由とその安全を保証すべきだ」と要求。特に、マレーシア政府に対して、「政府の関与で、少数派宗派とイスラム教徒間の緊迫が高まっている」と指摘し、「宗派間の対話を促進すべきだ」と述べている。
 エジプトとマレーシア両国だけではない。イラクでも少数派キリスト者が迫害を受けている。バグダッドのスレイマン大司教は「イラクからキリスト者のエクソダス(大脱出)が始まっている」と警告している。バチカン放送(独語電子版)によると、イラク北部モスル市で先日、2人のキリスト者が何ものかによって射殺された。
 スイスで昨年11月29日、イスラム寺院のミナレット(塔)建設禁止を問う国民投票が実施され、建設禁止が可決された。欧州連合(EU)最大のイスラム教社会を抱えるフランスでは26日、国民議会(下院)調査委員会がイスラム女性の「ブルカ」着用を将来禁止する内容の報告書を提出した。
 欧州キリスト諸国の一連の動きに対抗するかのように、アラブ・イスラム諸国では少数宗派キリスト者への憎悪、敵対行為が不気味なほど高まっている。危険な兆候だ。