オーストリア日刊紙プレッセを読んでいたら、非常に興味深い小記事があった。ワシントン大学の医療関係者が65歳以上の約3000人を対象に5年から8年間にわたり調査した結果によると、認知症の患者ががんに罹る率は平均値よりほぼ70%低かった一方、がん患者が認知症に悩まされる危険性は43%少なかったという。この調査結果は専門誌に公表された。どうして認知症患者のがん危険率が低く、逆に、がん患者の認知症になる率も低いか、等の説明は記事の中にはなかった。
 そこで当方は医者でもないのに「どうしてか」を考えてみた。以下、当方の「診断」だ。

 認知症患者は記憶を次第に失う。現実の動きを過去の記憶と照らし合わせて考える能力が減少する。換言すれば、過去の記憶がもたらすストレスが減少する分、がんにかかる率が低くなる。一方、がん患者は病を忘れることができない。「病気が悪化すればどうするか」「新しい治療方法は」等、頭の中でいつも考えている。病を忘れることができないため、記憶を司る脳の部分は常に緊張している。それが逆に、認知力の低下を防いでいるのではないか。
 全ての病の背後にはストレスが何らかの形で関与していると思うからだ。カナダ人の生理学者ハンス・セリエの「ストレス説」に基づく。ストレスが特定の病ではなく、さまざまな病気を誘引する有害要因となるからだ。そこで、認知症とがんの関連をストレス説の観点から考えてみた次第だ。
 医者でもない一介のジャーナリストがそのようなテーマを考えたところで、暇つぶしになっても、あまり意味がない。その上、そのような素人診断をコラム欄に紹介するとは無責任だ、と指摘されれば、弁解の余地はない。
 ただ、当方も11年前、がんに罹り、数年間、治療を経験したこともあって、がん患者の認知症にかかる率が低い、と書いてあった記事に目が止まったのだ。特に、最近、物忘れもひどく、いよいよ認知症の兆候か、と内心心配していることもあって、両者の関係を指摘した記事を見過ごせなかったのだ。
 ただし、当方のコラムが読者を混乱させたとすれば、許してほしい。人間は結局、身近な問題(健康問題)にもっとも関心がいってしまうものだ。
 今年もあと1日を残すばかりとなった。読者の皆さんも健康に留意され、新年を心身ともに健康で迎えて下さい。今、病に悩まされている読者がおられたら、ストレスをプラス・エネルギーとして、強く逞しく生きて下さい。