欧州の各地で既にクリスマス・マルク(クリスマス市場)が始まっている。音楽の都ウィーン市の市庁舎前広場のクリスマス市場は欧州でも有名だ。欧州のクリスマス雰囲気を満喫するために日本からも近年、ウィーンの市場を訪れる旅行者が増えている。
 ところで、読者を欧州のクリスマス雰囲気に誘った後で以下の話を紹介するのは少々、気が重い。
 オーストリアの隣国イタリア北部のコカリオ(Coccaglio)で現在、「ホワイト・クリスマス」というモットーのもとで、外国人排斥キャンペーンが展開中だ。オーストリアのカトリック通信社(カトプレス)が23日に報じたものだ。
 「ホワイト・クリスマス」は文字通り、雪で覆われた「白いクリスマス」を意味する。ビング・クロスビーの同名のヒット曲を思い出す人も多いだろう。しかし、ここでは北アフリカ出身の移民や難民を排除した、という意味が暗に含めている。美しい雪景色に包まれたロマンチックな「ホワイト・クリスマス」の世界ではない。
 人口約7700人の同市のフランコ・クラレティ市長は10月末、「クリスマス前までに全ての不法滞在の外国人や難民を町から一掃する」と宣言したのだ。
 市長の説明によると、「クリスマスは客(外国人)を手厚くもてなすお祭りではなく、キリスト教の伝統であり、われわれのアイデンティティだ」という。皮膚の色が異なる移住者や難民のお祭りではないといいたいのだ。
 市長の外国人排斥宣言には反対の声もある。イタリアのカトリック教会司教会議議長のアンゲロ・バグナスコ枢機卿は「外国人や移住者を排斥する運動はキリスト教精神と反する。厳しい状況下にある移住者や難民を支援することこそがキリスト教の伝統だ」と主張している。
 いずれにしても、ホワイト・クリスマスはあくまでも雪景色に追われたクリスマス・イヴの夜を表現した言葉であってほしいものだ。
 
(イタリアには毎年、数多くの移住者や難民が海を越えてやってくる。その全てを受け入れられないことは当然だ。移住者を歓迎すべきだ、という教会側の要求も非現実的だ。しかし、イタリアに到着すると直ぐ、入管収容施設に送られ、強制送還される現状に対しては、多くの批判があることも事実だ)