オーストリアに住むトルコ人家庭問題が連日、当地のメディアで紹介されている。ウィーンに住むトルコ人家庭の17歳の娘が今月20日夜、パーティに出かけたが、兄(22)が妹をパーティから連れ戻し、自宅内に隔離し、逃げようとすると暴力を振るったという。娘は翌日、自力で警察に電話をし、「家族に自宅で拘束されている」と緊急通達した。数時間後、警察は現場に到着し、娘の意思に反して隔離し、暴力をふるった兄を「自由剥奪と暴行」などの理由で逮捕した。兄は妹が西欧文化に染まり、イスラムの教えを蔑ろにしていると批判してきたという。
 欧州に住むトルコ人家庭では同じようなケースが頻繁に生じている。
 西欧文化とイスラム教の教えの葛藤、イスラム教の教えを守らない子供たちに対し、親が力ずくで拘束したり、時には殺害するといった悲劇が生じている。例えば、オーストリアの第2の都市グラーツ市で、つい先日、トルコ人家庭の娘が強制結婚を嫌い、自殺した事件があった。
 警察当局は子供たちの権利を認め、自分の意思に反し親から拘束され、暴力を振るわれた場合、17歳の娘のケースに見られるように、家族に対しても厳しく処罰している。
 当方はこの欄で世界キリスト教統一神霊協会(通称・統一教会)の信者の拉致問題を書き、日本の警察当局が拉致された統一教会信者の保護救済を実施しないことに疑問を呈し、「日本の『信仰の自由』求める署名運動」(2009年10月8日)を書いたばかりだっったので、トルコ人家庭問題に対するオーストリア警察当局の対応に強い関心を向けていた。
 統一教会の信者が拉致された場合、これまで警察当局は「家庭問題」として無視し、関与してこなかった。30歳を越えている信者が親から拉致され、強制的に数年も隔離されていたにもかかわらず、警察当局は何も対応せず、静観するだけだったのだ。その点、事件に関った親や兄弟も逮捕するオーストリア警察とは好対照だ。
 ちなみに、統一教会の信者とトルコ人の娘の違いは、前者がその信仰を捨てるように強要され、後者はイスラム教の教えを守るように強要されたことだ。共通点は自己の意思に反して拘束されたという事実だ。そして注目すべき点は、オーストリア警察当局と日本警察の対応の相違だ。