オーストリア政府は17日、同性愛者の結婚を認めることを決定し、来年1月から施行することになった。ただし、夫婦として戸籍役場で登録することはできない。
 同国では、社会民主党と国民党の大連立政権だが、同性愛者の結婚問題では国民党が積極的だった。国民党はドイツのキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党で、その党綱領は「キリスト教の精神」をそのバックボーンとしている。
 そのキリスト教系政党が同性愛者の結婚を率先して認めた背景には、リベラルな有権者の支持を狙うプレル党首(副首相兼財務相)の意向があるからだ。シュッセル元党首ら党内長老派からは強い反対があった。
 欧州全土を見ると、西欧では多くの国が同性愛者の結婚を認めている。同性愛者の権利を最大限公認している国は、スペイン、スウェーデン、ノルウェー、オランダだ。戸籍役場の結婚も認め、異性間の結婚と同等の権利が付与されている。
 フランス、ポルトガル、チェコはオーストリアと同様だ。結婚を認めるが、その権利は異性間の結婚より小さい。西欧で同性愛者の結婚を認めていない国はローマ・カトリック教会の総本山があるイタリアとアイルランドぐらいだろう。
 一方、旧ソ連・東欧諸国では多くの国が同性愛者の結婚を認めていない。ロシアしかり、ポーランド、ウクライナ、ルーマニア、ブルガリア、セルビア、アルバニアも同様だ。
 ロシア出身の知人記者は「ソ連共産政権時代では1980年代まで同性愛者問題はタブーだった。同性愛者であることが判明すると逮捕された。現代では同性愛者グループも存在するが、同性間の結婚は認められていない」という
 同性愛者問題では現在、西欧がリベラル、東欧が保守的――というわけだ。ちなみに、宗教的観点でみるならば、正教国家が同性愛者の結婚に強く反対する一方、新旧教会国家がリベラルな風潮に押されて容認傾向にある、といえるだろう。