潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は14日、一日断食をした。胃の調子が悪いからでも減量のためでもない。世界で飢餓に苦しむ10億人以上の人々への連帯を表明する為という。
 国連事務総長の断食を、カリスマ性がなく、人気が低迷する事務総長のパフォーマンスに過ぎない、と切り捨てることは避けたい。
 空腹感、飢餓感はそれを経験しない限り、分らないものだ。3食十分食べることが出来る人には絶対に分らない。例え、1日3食を抜くだけでも苦しい。国連事務総長が率先して一日断食したということは素直に評価すべきだろう。
 ところで、世界食糧サミットが16日から3日間、ローマで開催された。190カ国以上から約1000人が集まり、世界の食糧問題を話し合った。
 現在、地球上の人間の6人に1人以上が満足に食事を取ることが出来ない状況下にある。西暦2050年までに世界の食糧問題を解決するためには現在の食糧生産量を70%アップしなければならない、といった統計も公表されている。
 世界食糧サミットに、ニンジンを効果的に収穫する方法とか、どうしたらコメの生産量を増加させるか―などの答えを期待した参加者は失望したことだろう。
 10億人が飢餓に苦しむ現代でも食糧自体は十分ある。問題は食糧の生産量ではなく、その公平な分配だ。食糧の生産問題より、公平な分配問題がもっと困難な課題となって残っているのだ。
 国連は2000年9月に開催されたミレニアム・サミットで、「21世紀における国連の役割」について検討し、世界中の全ての人がグロバール化の恩恵を受けることができるための行動計画を提示した「国連ミレニアム宣言」を採択した。貧困、教育、環境などの8項目(ミレニアム開発目標)を掲げ、数値目標と2015年という達成期限を掲げた。
 2015年までに飢餓者を半減することはできるか、その成否は、繰り返すが食糧生産量に依存しているのではなく、「新しい倫理観に基づいた」(べネディクト16世)公平な配布にあるというのだ。その意味で、食糧問題は人類の成熟度を測る課題となってわれわれの前に横たわっている、といえるわけだ。