欧州連合(EU)の主要国の中で北朝鮮と国交関係がない唯一の国、フランスがここにきて北との外交関係樹立の方向に動き出した。
 北朝鮮の国営朝鮮中央通信社(KCNA)によると、フランスのラング北朝鮮問題担当大統領特使は今月9日から5日間の日程で訪朝中だ。両国間の国交正常化が主要議題という。
 フランスは過去、北との国交樹立に無関心だったわけではない。社会党のミッテラン政権時代、外交関係樹立の気運は高まったが、国交支持者のミッテラン大統領に同国外務省が強く反対した。最終的には、人権問題や核問題がネックとなって外交関係樹立まで踏み出すことはなかった。
 サルコジ政権の誕生で状況は変ってきた。フランスの国威高揚を夢みるサルコジ大統領はこれまで自国の外交圏外だった朝鮮半島にも強い関心を示し、昨年1月末には国交樹立の前段階として外務省代表団を訪朝させている(北との外交関係に消極的な外務省は同国の保守紙フィガロに、「北朝鮮が過去、フランス人を含む28人の外国人を拉致した」という情報をリークし、国交に積極的な大統領府に警告を発している)。
 実現できるか否かは別として、サルコジ大統領の狙いは明らかだ。大国・米国が手こずる北朝鮮の核問題に積極的に関与し、フランスの外交を世界に誇示するというものだ。
 ところで、フランスが過去、国交樹立への障害としてきた北の核問題、人権問題は何も改善されていない、むしろ悪化すらしている。北朝鮮は過去、2度の核実験(2006年10月と09年5月)を実施し、その人権問題は深刻さを増している。
 一方、北朝鮮は過去、フランスとの国交樹立を目指して活発な渉外を展開させてきた。フランスと国交関係はないが、国連教育科学文化機関(UNESCO)本部のパリに同国代表部を設置している。ちなみに、金正日労働党総書記の長男・正男氏や次男・正哲氏がパリを頻繁に訪問し、故金日成主席はリヨン大付属病院の心臓外科医に手術を受け、金総書記の夫人、高英姫氏(04年死去)もパリでがん治療を受けるなど、金ファミリーは過去、そして現在もパリとは縁が深い。
 いずれにしても、ラング特使がサルコジ大統領にどのような訪朝報告をするか分らないが、サルコジ大統領の野心に助けられ、北はフランスとの国交樹立という大きな外交成果を手に入れるかもしれない。そうなれば、フランス主導のEUカードが朝鮮半島の動向にも波及し、ひいては米朝交渉の行方にも影響を与えることになるだろう。