米ポップス界の女王マドンナがブルガリアの首都ソフィアで今月29日、コンサートを開催する予定だが、同国の主要宗教・正教会関係者は「グリゴリオ暦では29日は洗礼ヨハネの斬首の祭日に当たる。その日にいかがわしい歌手がコンサートを開催するとは何事か」と激怒、「キリスト教の価値を汚すものだ」とコンサートの中止を要求している。
 当コラムの読者ならば既にご存知だと思うが、マドンナは今月15日、ポーランドの首都ワルシャワでコンサートを開催したが、15日がローマ・カトリック教会では「聖母マリアの被昇天祭」の祝日に当たることから、カトリック教会根本主義者や愛国主義者からコンサートの中止を要求する声が挙がったばかりだ。ちなみに、ワルシャワでのマドンナのコンサートは強い反対にも関わらず、開催された(駐オーストリアのポーランド大使館)。
 「洗礼ヨハネの首切り」の話は、新約聖書の「マタイによる福音書」14章や「マルコによる福音書」6章に記述されている。「洗礼ヨハネの斬首」をテーマとしたオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」を読まれた読者も多いだろう。
 さて、洗礼ヨハネの評価について、聖書学的には「大預言者」から「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ」「天国で最も小さな人間」までさまざまな見解がある。正教会ではイエスの先駆者であったという点から、「前駆授洗者」という称号をつけている。それを祝日が8月29日なのだ。
 当方はマドンナの歌をまったく知らないが、サンクトペテルベルク、ワルシャワ、そしてソフィアと、コンサートが開催される都市でいずれも「コンサート・ボイコット」が叫ばれるということは、通常の歌手ではないはずだ。
 それにしても、「洗礼ヨハネの斬首」の日にマドンナのコンサートを開くという提案は誰の発想だったのだろうか。コンサートではサロメがマドンナに憑依したかのような錯覚に陥るファンも出てくるのではないか。