北朝鮮が金正日労働党総書記用としてイタリアの造船メーカー、イジムト社に高級ヨット2隻を注文していたことが発覚し、注文した2隻(約1300万ユーロ、約17億4000万円)とその代金の一部が押収された事件で、ヨットを注文したオーストリアの企業は首都ウィーン市2区にあるモーターボート・サービス会社のS社であり、S社に高級ヨットの購入を依頼した北朝鮮ビジネスマンは、金総書記の秘密資金を運用する部署の労働党資金担当の権栄緑副部長(76)であったことがこのほど明らかになった。
 権氏は、2004年6月末に閉鎖に追い込まれた北朝鮮の欧州唯一の直営銀行「金星銀行」の監査役(実質責任者)として同銀行創業(1982年)以来、関与してきた。また、 権氏は金正日総書記のベンツ購入係といわれ、ウィーン市16区に拠点を置いて欧州を自由に動き回り、ドイツで数百台の高級車ベンツを購入した実績がある。そのため、同氏は独自動車メーカーからVIP扱いされているほどだ。
 一方、S社は過去、北朝鮮とは取引きがあり、高速ボートやモーターなどを北側に輸出してきた。昨年も約100万ユーロ相当のボート部品などを輸出した実績がある。
 オーストリア当局は、北朝鮮に贅沢品などの輸出を禁止した国連安保理決議1718号に違反した疑いがあるとして、外国貿易法違反などでS社の責任者を調べている。一方、権氏は事件の発覚後、警察当局の捜査を回避するため急遽帰国したものとみられる。