北朝鮮の金正日労働党総書記が訪朝した中国要人と会談したことで、健康悪化説が流れて以来、燻ってきた「金総書記死亡説」は払拭されたが、それ以上でも、それ以下でもないだろう。ここでは総書記の健康状況には言及しない。金総書記の健康問題は、遅かれ早かれ、時間が解答してくれるだろう。時間に委ねた方が賢明なテーマだ。
 さて、ここで気になる北朝鮮要人が2人いる。1人は駐スイスの李哲大使であり、もう1人は金総書記の要請に基づき欧州で物品調達に動いてきた権栄緑氏だ。今回は権氏について述べてみたい。
 同氏は長い間、ウィーンにあった北朝鮮直営銀行「金星銀行」(2004年6月閉鎖)に幹部として登録されてきた人物だ。同氏は拉致された韓国映画監督夫妻をベルリンで迎えたり、大量のベンツ購入でメディアに報じられたことがある人物だ、といえば思い出す読者もいるだろう。藤本健二氏の著書「金正日の料理人」(扶桑社)の中でも紹介されているから、ご存知の方もあるだろう。
 その権氏の動向に関心があるのは当方1人ではない。ベルリン駐在の日本のフジTV関係者たちも密かにこの謎に満ちた人物を追っているという。
 問題は同氏をキャッチし、会見できる機会がほとんどないことだ。権氏は過去、ウィーンと平壌間を頻繁に行き来してきた。ウィーンやザルツブルクの潜伏場所は分かっていても不在が多い上、同氏を見つけたとしても、同氏は何も語らない。当方は過去、数回、同氏と会い、挨拶を交わしたことがあるが、それ以上を超えて交流はできなかった(権氏は独語を流暢に話す)。
 権氏のアパートを訪問した時だ。戸のブザーを押すと、出てきた同氏は当方の顔を見ると、「何しにきたのだ」と喧嘩腰だ。当方が「できましたら、少しお話をしたいのですが」というと、権氏は顔色を変え、「馬鹿野郎」と罵声を飛ばすと戸を“バタン”と閉めてしまった。権氏は一度、「自分はもう年だから、退職の身だ。ベンツ車の購入ももはやしていない」と語った。
 当方は昨年、今年76歳の権氏を偶然、ウィーンの北朝鮮大使館の中庭で見た。背広姿の同氏は矍鑠(かくしゃく)とした紳士だった。とても「退職した老人」といった感じではなかった。
 なお、権氏は、金総書記の義弟、駐オーストリアの金光燮大使や、金総書記夫人だった故・成恵琳夫人の親戚関係者よりも地位(党ランク)の高い人物であり、「こちらから電話して呼び出すことができる人物ではない」(親戚関係者)という。
 「権氏、お元気ですか」