ウィーンに一時帰国中のオーストリアの駐中国マーチン・サジィック全権大使(Martin Sajdik)が20日夜、「北京五輪後の中国」というタイトルで講演すると聞いたので早速、出かけた。当方にとって、五輪後の中国の政情は興味深いが、それ以上に、大使が北朝鮮担当大使を兼任し、昨年9月9日の北朝鮮建国60周年祭に出席した外国外交団の一員であったことを知っていたので、講演後、是非とも会見したいと考えたからだ。
 大使は「中国経済の現状」と「外交政策」の2点を客観的な事実と経済統計を挙げて説明した。欧州連合(EU)は中国にとって最大貿易国である一方、人権外交を優先するEUの価値観外交は中国との衝突を回避できないと指摘。例えば、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が訪欧し、サルコジ仏大統領と会談した時、北京指導部を怒らせたことは記憶に新しい。ブッシュ前米大統領が同14世と会見しても大きな声を出さなかった中国指導者もEUに対しては声を荒げて抗議した。この違いは、「EUが共同軍隊を有さない単なる経済共同体の域を越えていない、という現状を北京指導者が良く知っているからだ」という。換言すれば、「米国は怖いが、EUは怖くない」といったところかもしれない。
 ここでは詳細に報告できないが、EUの視点からみた北京情勢の分析は、新鮮で学ぶことが多かった。
 さて、昨年9月9日の北朝鮮建国60周年祭について、大使は「招待された外交官たちは金総書記が登場すると考えていたが、顔を見せなかったので一様に驚いた。しかし、北朝鮮政府主催晩餐会は非常にスムーズに運営されていたので、われわれ外交官たちも感動した」と述べ、金総書記の欠席は既に折込済みで、北朝鮮指導部には大きな動揺が当時、感じられなかったと証言した。
 大使は「北朝鮮労働党の党大会は1980年以来、開催されていない。金総書記は正統性を確保できる指導体制を考えているはずだ」と述べ、ポスト金総書記の体制に強い関心を示した。