ローマ・カトリック教会の総本山バチカン法王庁を含むバチカン市国はれっきとした国家だ。イタリアのローマ市の一角を占める世界最小国家で人口は約1000人だ。面積は0・44平方キロメートルに過ぎず、日本の皇居より小さい。ローマ市内にはバチカン関連の施設があり、治外法権を有している。そのバチカン市国が創設されて来年2月で80年目を迎える。それを記念して多数の関連行事が予定されている。
 当時の法王ピウス11世は1929年2月、対立が続いていたイタリアと合意し、法王領土を放棄する代わりにバチカンの独立を認めるラテラノ条約を締結した。それに基づき、バチカン市国が国家として承認されたわけだ。国連には常駐オブザーバーを派遣し、これまで世界の政治にも深く関与してきたことは周知の事だ。
 創設80年目を迎えるバチカン市国だが、その解体を要求する声が絶えないことも事実だ。英週刊誌ザ・エコノミストが「バチカンは国家としての外交権を放棄し、非政府機関(NGO)となるべきだ」と要求して反響を呼んだことがあるが、国連加盟国の一部からもバチカン市国解体論が聞かれる。
 バチカン市国解体要求の背景には、「真理の独占」を主張し、他のキリスト教会を「真のイエスの教会ではない」と宣言するバチカンに対して、プロテスタント教諸国を中心に根強い反発があるからだ。バチカン側には「イエスの教えを直接継続した弟子ペテロを継承するカトリック教会こそが唯一、普遍の教会である」という確信があるが、その排他的な確信が宗派間の対話の最大の障害となっていることは誰でも知っている現実だ。
 創設80周年の来年は、バチカン市国の解体論がメディアでも話題を呼ぶだろう。