国際原子力機関(IAEA)定例理事会初日の午後の会期がスタートする直前、理事国の南アフリカ代表部が記者会見を行い、IAEA次期事務局長選に同国のIAEA担当大使、アブドル・ミンティ氏(Abdul Minty)を擁立すると発表した。
 南アからウィーン入りしたソンジカ鉱業・エネルギー相は同日、理事会議長に同大使の立候補を通知した政府書簡を手渡した。駐国連機関担当日本代表部の天野之弥大使が既に立候補を表明しているから、これで候補者は2人となったわけだ。
 ちなみに、事務局長候補者受け入れ締め切りは12月31日まで。来年6月理事会までに最終候補者を決定し、同年9月の年次総会で正式に任命する運びとなっている。
 ミンテイ大使は1939年生まれ。今年で69歳だ。1995年からIAEA担当大使に就任しているから、IAEA担当大使の中でも最長任期を誇る。2006年度の年次総会議長を務めるなど、IAEA関連の重要職務をほぼ全て経験済みだ。
 ミンティ大使は記者会見で、「現在は核エネルギーのルネッサンスを迎えている。IAEAの責務は益々重要性を帯びてきた。私はIAEAの任務の中でも技術協力や核エネルギーの医療分野への応用などが大切だと考えている」と、その信念を披露した。
 同大使は、意見の異なる理事国を一つにまとめる政治手腕で評判がある。なお、南アが民主国家となって以来、同国が国際機関のトップに立候補者を出すのは今回が初めて。それだけに、南ア政府も力が入っている。ミンティ大使はアフリカ同盟(AU)の統一候補者でもある。
 世界初の被爆国・日本から天野大使が、原爆を製造後、それを破棄した最初の国、南アからミンティ大使が出馬した。両候補者の熾烈な戦いが予想される。