国連記者室で仕事をしていると、パレスチナ民族評議会(PNC)議員で著名な作家のファイサル・ホウラニ氏が訊ねてきた。この機会を逃すわけにはいかない。再会を確認しあった後、同氏にブッシュ政権への評価、次期米政権への期待などについて、早速、聞いてみた。
 ホウラニ氏はイスラエルに対していつも厳しく批判してきた。「パレスチナ問題はわれわれが始めたものではない。イスラエルが武力で突きつけてきた問題だ」という認識がある。そして、そのイスラエルを支援してきた米国政権にも強い憤りを持っている。
 ブッシュ米政権の8年間について、「彼はパレスチナ国家建設案を提唱したが、それを実際に履行する行動は何もしなかった。中東和平を主要な政治課題に挙げたが、それは談笑するだけのテーマに過ぎなかった」と切り捨てる。オバマ次期米政権についても「私は彼に過大な期待は持たない。米国は過去、そして未来もイスラエルを支持しているからだ」と明確に指摘する。
 イスラエルについてはもっと厳しい。「イスラエルの政治は腐敗している。政治指導者のレベルも中東和平を真摯に取り組むことができる水準ではない。イスラエルは中東地域では大国だ。他国の事情など配慮しない。ネタ二ヤフ元首相だけではない。全てのイスラエルの指導者たちはパレスチナの将来などシリアスに考えていない」と言い切る。パレスチナ社会でのハマスとファタハ間の対立についても「背後にイスラエルが扇動している」とみている。
 同氏の話を聞くと、中東和平への見通しはどうしても悲観的になる。彼は「私は悲観的ではない。現実的なだけだ」と弁明する。家族・親族を失い、故郷を捨てなければならなかった数多くのパレスチナ人を見てきたからだろうか。ホウラニ氏の“現実”は聞く側の心を重たくさせる。
 同氏は最後に、「世界は目下、金融危機で喘いでいる。来年はもっと厳しくなるだろう。それだけに、パレスチナ人への人道支援が減少するのではないかと懸念している」という。
 なお、11月26日は「パレスチナ人の権利への国際連帯の日」だった。ウィーンの国連内でもささやかな催しが挙行された。