北朝鮮は24日、来月1日から開城観光事業と南北間の軍事境界線を走る京義線を中断すると通告した。幸い、経済特別区「開城工業団地」については、サービス業などに従事する職員や事務員を削減させるが、企業活動は「特例として保証する」という。
 開城工業団地(KIC)は昨年末までで第1次開発計画を完了した。KICは開業当初、数社の韓国企業だけだったが、今年7月段階でその数は72社に急増している。同団地には3万人以上の労働者が働き、これまで3億970万ドル相当を生産している。
 ウィーン大学東アジア研究所のルーディガー・フランク教授らが作成した「ウィーン・ワーキング・ペーパー」によると、ドイツの「Prettl エレクトロー二ク」社が今年3月、自動車部品製造工場の建設を開始している。独社はKICに進出した初の非韓国企業だ。同社は来年春には約500人の北労働者を雇用して操業を開始するという。同ペーパーによると、2社の中国企業も北側とKICに進出することで合意している。
 同団地で働く北朝鮮労働者の賃金は57・50ドルだったが、賃上げ交渉が成功して今年から60・375ドルと約5%アップしたばかりだ(ワーキング・ペーパー)。もちろん、超過勤務は別払いだ。
 欧米の賃金水準とは比較できないが、北朝鮮国民にとっては魅力的な収入だ。北当局は李明博韓国政権の出方次第ではKICの閉鎖も視野に入れているというが、KICから入る外貨収入を完全に放棄してまで、韓国側に強硬姿勢を貫くことができるだろうか。
 なお、KICに進出を考える企業にとって懸念事項は、第1に核問題を含む北朝鮮の政情だろう。その他、「ワッセナー・アレンジメント」(通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関する合意)に該当する汎用品の扱い問題、インフラ整備、エネルギー供給問題、等がある。KICが本格的に成果をもたらすためには、乗り越えなければならないハードルが控えているわけだ。