オーストリア内務省連邦犯罪局は先日、「2007年度マネーロンダリング(不法資金の洗浄)報告書」を公表した。それによると、同国で昨年度、1599件の通達がマネーロンダリング連絡所(Austrian Financial Intelligence Unit=FIU)に届いた。その内、1085件はマネーロンダリングの容疑だ。通達件数1553件のうち、クレジット、金融機関から1039件で最も多く、匿名預金口座関係から514件、そして財務省21件、保険会社6件、営業関係者4件、公証人3件、管財人2件、そして労働組合簿記係、弁護士、不動産業者、カジノ、税関所から各1件の通達があった。
 不法資金の洗浄容疑件数1085件は前年度比で394件急増している。増加の原因について、FIU責任者ジョセフ・マール氏は「通達義務のある職種関係者のマネーロンダリングに対する意識が高まった結果」(同国内務省発行「公安」9、10月号)と分析している。
 同国では1994年1月1日、現銀行法に基づき不法資金の洗浄への監視強化と関係省への通達が義務付けられた。2003年には同義務適応職種が拡大され、骨董店、宝石店なども1万5000ユーロ以上の買物顧客に身分証明書の提示を要求する義務が明記された。
 マネーロンダリング対策が急がれる背景には、国際組織犯罪グループ、テロ組織が麻薬密売などで稼いだ不法な資金をマネーロンダリングを通じて合法的な企業活動に利用するケースが増えているからだ。その意味で、テロ・組織犯罪対策の一環であるわけだ。
 FIUは政府間会合FATF(金融活動作業部会)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、欧州刑事警察機構(Europol)、国際刑事警察機構(Interpol)などと連携を取りながら、マネーロンダリングを監視している。
 ところで、欧州で活躍してきた北朝鮮の要人、権栄緑氏(前労働党資金担当副部長)はウィーンではカジノ通いで有名で、一時期、西側情報機関から「カジノで不法資金の洗浄している」という疑いが持たれたことがある。