ロシアのメドベージェフ大統領がグルジアの南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立宣言を承認したことで、欧米とロシア間の関係は一層、険悪化してきた。同大統領は「グルジアのサーカシビリ大統領が南オセチアに武力介入した結果、同地に住むロシア系住民の安全が難しくなった」と述べ、独立を承認した理由を説明した。
 ところで、ロシア側の論理で行けば、同国はセルビア共和国に帰属していたコソボの独立宣言を承認しなければならなくなる。コソボのアルバニア系住民は久しくセルビア軍に弾圧されてきたからだ。しかし、ロシアはコソボの独立宣言を拒否している。もちろん、セルビア共和国にとっても、ロシアの南オセチアの独立承認は決して歓迎されるものではない。そのとばっちりを受けて、コソボの独立承認が加速する懸念があるからだ。
 ロシアの強硬姿勢に対して、欧米諸国では戸惑いが支配している。対ロシア強硬制裁を要求するバルト3国(リトアニア、ラトビア、エストニア)、ポーランドでは「新冷戦」という表現すら聞かれるほどだ。
 米国がロシア軍のグルジア軍事介入を批判すると、チュルキン・ロシア国連大使は「北大西洋条約機構(NATO)軍は1999年3月、コソボを支援する目的から国連安保理の承認なくセルビアの首都ベオグラードを空爆したではないか」と述べ、即反論。その一方、南オセチアの独立承認の理由が、どうしてチェチェン共和国には適応されないのか、といった質問には明確な返答がない。
 第2次世界大戦後、国境線の不変更を原則としてきたが、それを破棄したのは今回のロシアが初めてではない。欧米諸国も今年、セルビア帰属のコソボの独立宣言を承認したばかりだ。すなわち、ロシアも欧米諸国も国際条約に違反する一方、他の側の違反を批判している、というのが客観的な状況かもしれない。
 政治には矛盾があり、それを隠蔽するための議論は容易く構築できるものだ。今回のグルジア紛争とそれに伴う欧米・ロシア間の対立はそのことを明確に示している。