案外知られていない事実がある。ウィーンに暫定技術事務局を構える包括的核実験禁止機構(CTBTO)の署名国数が178カ国にもなり、条約は既に普遍的条約のレベルに達しているということだ。批准国(加盟国に相当)数でも国際原子力機関(IAEA)の加盟国数と同数の144カ国だ。もう一つは、イスラエルは核拡散防止条約(NPT)に加盟していないが、CTBTOの署名国だ。そのため、CTBTOは、核兵器200基を保有すると推測されているイスラエルと非核拡散問題で協議できる数少ない国際外交の枠組みといえる。
 しかし、残念ながら、1996年9月の国連総会で署名開始されたCTBT条約は今日まで発効していない。「条約14条」があるからだ。すなわち、研究用、発電用の原子炉を保有する国44カ国の署名・批准を条約発効の条件としているのだ。
 条約署名開始から12年目を迎えたが、44カ国中、9カ国が依然、批准を完了していない。北朝鮮、インド、パキスタンの3国は未署名国だ。5カ国の核保有国では米国と中国が未批准国に留まっている。
 条約の早期発効を実現する為に条約14条の改正案も聞かれたが、条約を改正した場合、署名・批准プロセスのやり直しが要求される。そのため、「未批准国を説得して批准させる方が時間の節約だ」(批准国関係者)という声が強い。
 条約発効のカギを握っているのはやはり、米国だ。米国が条約を批准すれば、ワシントンの出方を注視してきた中国の批准は問題ない。第30会期開催中のCTBT準備委員会のハンス・ルンドボルク議長(スウェーデン大使)は25日の記者会見で、「次期米大統領選の2人の候補者、民主党のオバマ上院議員はCTBTを支持すると表明しているし、共和党のマケイン上院議員も好意的に受け取っている。政治家の中でCTBTに理解が増えてきている」と説明し、条約の早期発効プロセスに自信を示した。
 CTBTOの最大の魅力は世界の全地域を網羅する「国際監視システム」(IMS)だ。IMSは単に、核実験監視の目的だけではなく、津波早期警報体制など地球環境問題の監視ネットとして利用できるからだ。米国がCTBTOを完全に放棄できない点はそこにある、といわれる。