ついに決断が下されたようだ。国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長に近い関係者は「ブッシュ米政権から最近、事務局長の4選出馬は絶対に承認しないとの警告が届いたばかりだ。事務局長は米国の意向を無視すればどのような問題が生じるか知っているから、4選出馬を断念したと聞いている」と語った。
 エルバラダイ事務局長の3選出馬の際も米国からは強い反発が起きた。特に、事務局長が米国の対イラク政策を批判してきたこともあって、3選反対の嵐がワシントンから吹くつけてきたものだ。それに対し、事務局長は当時、「IAEAは通常の国連機関ではなく、専門機関だ。トップの2選止まりの規約はIAEAには該当しない」と反論。最終的には、非同盟理事国らの支持と米国の妥協があって3選した経緯がある。
 エルバラダイ事務局長には心強い前例がある。すなわち、前任事務局長のハンス・ブリクス氏は4期、16年間(1981〜97年)、IAEA事務局長ポストに就任していたという事実だ。その意味で、エルバラダイ事務局長もあと1期、IAEAのトップを務める可能性は完全には除去できないわけだ。
 先の関係者は「事務局長は米国の政策を嫌っている。もちろん、ブッシュ米政権は来年初めで終わるが、どの候補者が米大統領に選出されたとしても、米政権の背後にはイスラエルがいるから同じだ」と説明、エルバラダイ事務局長の4選出馬の目は消えた、との認識を明らかにした。
 今秋の年次総会後に開催されるIAEA理事会で後任事務局長の選出問題が公式議題に取り上げられる予定だが、エルバラダイ事務局長が4選を断念したとすれば、新たな候補者探しが始まるわけだ。
 IAEA担当の外交筋によると、駐国連機関担当日本代表部の天野之弥大使は昨年末、アジア地域の理事国関係者にエルバラダイ事務局長の後任に立候補する意思を早々と表明し、支持を求めたという。ちなみに、天野大使の事務局長選出について、イランなど数カ国は「支持するとは現時点では表明できない」(イランのソルタニエイ・IAEA担当大使)との立場を取っている。