スイスの代表紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥングに「魔女の名誉回復」という記事があった。記事の内容を少しここで紹介する。
 「スイスのグラールス州政府は10日、“欧州の最後の魔女”アンナ・ゲェルディ(Anna Goeldi)の名誉回復を行った。同時に、政府は1782年の裁判が誤審であったことを認める提案を議会に提出した」
 アンナ(1740−82年)は「欧州最後の魔女」と呼ばれ、スイスでこれまで多くの議論を呼んできた女性だ。同州政府の今回の決定に先駆け、同州議会は昨年11月、アンナの名誉回復を求める動機を採決している。なお、今回の決定は改革派教会とカトリック教会関係者との協議のもとで下されたという。
 欧州では中世時代、特殊な能力を持つ女性が魔女として処刑されたケースは少なくない。しかし、アンナが生きていた時代は18世紀だ。啓蒙思想が台頭していた。多くの知識人は、もはや魔法や魔女を信じていなかった。それだけに、アンナの魔女裁判は今日まで多くの関心を呼んで来たわけだ(当時の裁判を調べたスイスのジャーナリストによると、アンナと関係を持っていた雇用主がその事実を暴露されることを恐れ、彼女を魔女として処分した、と主張している)。
 21世紀の今日、「魔女」や魔女狩りといってもピンとこないかもしれないが、魔女狩リ的な言動は依然、絶えないことも事実だ。メデイィアによる特定人物や機関への中傷誹謗報道は一種の魔女狩りだろう。自分と違った風姿や言動に接すると、人間はパニック反応を起こすものだ。その点は今も昔も変わらない。
 そういえば、2000年前のイエス・キリスはパリサイ人たちから「この人が悪魔を追い出しているのは、まったく悪魔のかしらベルゼブルによるのだ」(マタイによる福音書12章24節)と誹謗され、最後は十字架で殺害されている。そしてイエスの十字架後、「悪魔のかしらベルゼブル」と誹謗してイエスを殺害したことに後悔の念を持ち、その罪意識から解放されるために、当時の人々は「イエスの十字架は神の摂理だった」という教義を考え出したわけだ。「悪魔のかしら」と呼ばれ、処刑されたイエスの「名誉回復」は今だ行われていないのだ。