欧米キリスト教会では教会経営の不振で破産や身売りに追い込まれるところが出てきたが、その主因は欧米間で明らかに異なっている。米国カトリック教会ではここ数年、破産宣言をする教会が出てきたが、その理由は信者の急減というより、聖職者の性犯罪、それに伴う裁判コストと賠償金支払いが教会の会計を苦しめているのだ。例えば、米カトリック教会では2004年、ポートランド大司教区、アリゾナ州ツーソン教区、ワシントン州スポーケン教区が次々と破産宣言を強いられた。その破産原因は大司教や神父たちが子供たちに性犯罪を犯したことが発覚し、被害者との和解で巨額な損害賠償を払うことになったからだ。例えば、ロサンゼルス大司教区は聖職者たちが信者の子供たちに犯した性犯罪に対する賠償訴訟で約6億6千万ドルの和解金の支払いを強いられている。被害者総数は約570人にも及ぶという。教区側は教会関連施設などを売却して和解金を捻出する、といった有様だ。
 ベネディクト16世は先月の訪米時、米国聖職者に性問題の対応を厳しく要請しているが、当然だろう。訴訟社会の米国で聖職者の性犯罪に絡む訴訟件数を1件どころか数百件も抱えれば、教会は文字通り“支払い不能”となるのは目に見えている。福音を伝えるどころの話ではなくなってしまうからだ。
 一方、ローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王ベネディクト16世の出身地、ドイツ教会では信者離れ、それに伴う教会税収入の減少が教会運営を厳しくしている。だから、教会資産の切り売りなどに追い込まれる教会が出てきたわけだ(ドイツ教会を含む欧州教会でも聖職者の性犯罪は生じているが、それに伴う財政負担は米国教会ほどではない)。
 「世界キリスト教情報」が独立系IPS通信の情報として伝えたところによると、ドイツ教会の2000年度の教会収入は総額88億ユーロだったが、04年度には70億ユーロに減少。信者数もカトリック教会の場合、1990年度比で約200万人が減少したという。経営不振から教会がレストランに看板を変えたところまで出てきたという。「霊の糧」から「肉の糧」を売る場所に変身しただけだ、と冗談をいっている場合ではない。
 当方はコラム「2つの『世俗主義』のルーツ」の中で、米国の世俗主義と欧州のそれとは根本的に異なると指摘したが、同じ「教会破産」現象でも、欧米間の世俗主義の相違が色濃く反映しているわけだ。