北京夏季五輪大会開催まであと100日を切った。しかし、大会の気運を高める聖火リレーは治安警備員のガード下で進行する一方、チベット自治区の暴動を契機に欧米諸国からは中国の人権問題を糾弾する声が高まってきている。中国共産党政権が懸念してきた「北京五輪の政治化」は現実味を帯びてきた。
 そのような時、国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長は先日、英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューの中で「中国の人権問題に対し少し寛大に対処すべきだろう」と述べ、「欧州でもフランス革命から人権が確立されるまでには200年間の年数がかかった。中国共産党政権は1949年にスタートしたばかりではないか」と説明した。
 ベルギー出身の同会長はまた、「中国では過去60年間、段階的だが人権も改善されてきた」と指摘し、「北京五輪大会の開催は同国を更に開放する機会となると確信する」と主張した。同会長のこの“思いやり発言”を中国関係者が聞けば、感動で涙が出てくるのではないだろうか。
 同会長は先月10日、北京で開催されたIOC理事会で「事態は危機的」との認識を示し、中国当局に対し「人権尊重の義務を果たすべきだ」と苦言を呈していた。その会長が今、中国の人権問題に寛容な姿勢を見せ出したのだ。この間に何が生じたのだろうか。
 思い出すことができるのは、中国当局が欧米の圧力に屈して、「チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会見する用意がある」(中国・新華社が先月25日、複数の政府関係者の話として報じた)と表明したことぐらいだ。しかし、それすら、まだ実現していない。
 中国共産党政権が対話表明をしたぐらいで、IOC会長の対中人権問題のスタンスが急変したとは思いたくない。しかし、中国国内で人権改善の動きがあったとも聞かない。実際は逆だ。ロゲ会長の発言後、チベット自治区ラサ暴動の責任を問われ、チベット仏教僧侶2人が先月29日、無期懲役に、他の僧侶5人が懲役15年から20年の判決を言い渡されているのだ。
 一方、北京五輪大会を成功させるため、中国共産党政権は傷ついた国家の威信回復とイメージ・アップの為に懸命なロビー活動を展開中だ。例えば、中国のフィルハーモニー管弦楽団は今月7日、バチカン法王庁ローマ法王ベネディクト16世の前でモーツアルトのレクイエムを演奏する予定だ。中国側の発表によれば、「民族間と文化間の対話」促進に貢献することが目的という。
 中国共産党政権が北朝鮮の金正日労働党総書記に倣って“音楽外交”を展開させることも悪くないが、国内のチベット人民族との対話促進に先ず全力を尽くしてもらいたいものだ。