北朝鮮がフランスとの国交樹立に向けて腐心している矢先、フランスの保守紙フィガロが23日付で「北朝鮮が1970年代にフランス人を含む28人の外国人女性を拉致していた」と報じた。サルコジ大統領は今年7月、訪日予定だが、日本政府は拉致問題の早期解決を目指して同大統領と協議したい意向だ、という憶測も伝えられている(韓国聯合ニュース)。
 フランスは欧州連合(EU)の主要加盟国の中で唯一、北朝鮮と外交関係を樹立していない国だ。しかし、サルコジ政権の発足後、両国間の国交樹立も近い、といった期待が特に北側に強かった。その背景には、同大統領が就任直後から米国、ドイツ、ロシア、リビア、中国などを次々と訪問し、積極的な外交を展開し、訪中では人権問題を議題とはせず、エアバスの売り込み、原発の技術提携契約など、実利外交を進めていったからだ。
 北朝鮮側は国交樹立を目指してフランス国内で活発な渉外を展開させてきた。同国最高指導者・金正日労働党総書記の誕生日(2月16日)には、「フランス・北朝鮮友好協会」が朝鮮半島問題に関する国際会議をパリで開催し、北朝鮮の洪水被害者への支援金約1万ユーロが集めたほどだ。そのうえ、会議参加者は両国の早期外交樹立を実現するためロビー活動を強化する旨などを明記した行動計画を採択している。両国友好協会はまた、独自のサイトを開設し、積極的な情報発信を進めてきている。
 一方、フランス外務省代表団は1月末から2月2日まで訪朝、関係省と意見の交換をしている。そのため、両国の外交関係樹立は「時間の問題」と受け取られてきた経緯がある。
 それだけに、フィガロの記事は北側の期待に冷水を浴びせたわけだ。今回の報道では、北朝鮮との外交関係樹立に消極的な仏外務省が保守紙に拉致情報を流すことで、国交に積極的な大統領府に警告を発する狙いがあったのではないか、といった憶測が聞かれるが、真相は不明だ。
 ちなみに、北朝鮮はフランスと国交関係がないが、国連教育科学文化機関(UNESCO)の本部のあるパリに同国代表部を設置している。