「金正男氏(北朝鮮最高指導者・金正日労働党総書記と故成恵琳夫人間の長男)は昨年、平壌に戻った後、国内に留まっているようだが、労働党内でポストをもらったという情報は確認できていない。同氏が長期間、国内に留まっているということは通常ではない。ひょっとしたら、正男氏の身辺に何かが生じた可能性が考えられるね」
 北朝鮮消息筋は妙に意味ありげな表情を見せた。
 金正男氏はマカオを中心にモスクワやパリなど、これまでかなり自由に飛び歩いてきたことはよく知られている。それが昨年6月末、平壌に戻って以来、国外にほとんど出ていないという(正男氏が今年、マカオに出現した、という情報が流れたが、確認はされていない)。
 そこで、北朝鮮消息筋は「金総書記の後継者問題で正男氏が正哲氏(金総書記と故高英姫夫人との間の息子)と熾烈な権力争いを展開し、ここにきて正哲派の締め付けを受け、正男氏は窮地に陥っているのではないか」と推測している。
 来月で37歳を迎える正男氏が「海外放浪生活」を終え、故郷に定着したとしても不思議ではないが、そこは北朝鮮だ。久しく海外に放浪してきた親族を温かく迎える金ファミリーではない、というわけだ。
 パリを訪れたり、マカオで顔を見せたり、その度に話題を提供してきた正男氏だが、今度は「帰国した後、姿を見せない」という理由で北朝鮮ウォッチャーを騒がせているわけだ。メディアに話題を提供する点では、2001年、日本不法入国で拘束されて以来、正男氏は金総書記ファミリーの中では特出している。
 一方、駐ポーランドの北朝鮮大使・金平一氏(故金日成主席と金聖愛夫人との間の息子、金総書記とは異母弟)が「まもなく帰国する」といった情報が報じられたが、先の北朝鮮消息筋は「誤報だ。金平一氏はポーランドに留まり続けるだろう。同氏の帰国報道は根拠がない」と断言した。ちなみに、金平一氏は今年でポーランド駐在10年目を迎える。