独週刊誌シュピーゲル最新号(2月18日号)は独カトリック教会司教会議の新議長に選出されたロベルト・ツォリチィ大司教との会見記事を掲載しているが、同週刊誌はこれまで宗教者指導者との会見記事を積極的に掲載し、その度に大きな反響を与えてきたものだ。
 少し古くなるが、独神学者オイゲン・ドレバーマン氏との会見記事はドイツだけではなく、欧州のキリスト教社会に大きな波紋を投じた(同氏は会見の中で「聖母マリアの処女受胎」にも疑問を呈する一方、「カトリック教会は一種の権力構造となっている。イエスは現教会のヒエラルキーのような組織を設立する意図はなかった」と述べている)。
 シュピーゲルだけではない。欧米メディアは宗教指導者の発言やその活動に敏感に反応する。フランクフルター・アルゲマイネやノイエ・チューリヒャー・ツァイトゥングなど、代表的なドイツ語紙はバチカン法王庁が公表する法王文書や表明文を詳細に報じる。その背後には、宗教界の動向が政治、民族問題に大きな影響を与えると分かっているからだ。
 欧米の一流紙はバチカン・ウオッチャーや宗教問題専門記者を抱えているものだ。そして彼らの多くは「社の顔」だ。「宗教専門記者が誰か」がそのメディアのランクが決定すると言われているほどだ。
 オーストリア代表紙プレッセには長い間、PMPという署名記事が見られた。宗教問題に権威のある著名なジャーナリスト、ピア・マリア・ブレヒル女史の記事だ。同女史はセンセーショナリズムに流れるメディアの中でひときわ輝くクオリティーペーパー・ジャーナリズムのシンボルとして尊敬を受けていた。同女史が12年前、突然死去した時、プレッセ関係者だけではなく、大統領府、カトリック教会からも特別メーセージが公表されたほどだ。
 欧州社会は世俗化し、キリスト教会の影響力も減少してきたが、欧米メディアでは、真摯な宗教論、世界論を展開した記事にお目にかかる機会はまだ少なくない。その点、宗教問題といえばカルト問題に制限されているような日本メディア界とは異なるわけだ。