ロシアのミリオネアーは既に有名だ。最近、英国サッカーのプレミアリーグの「チェルシー」のオーナー、ロシアの大富豪ロマン・アブラモヴィッチ氏がウィーン市1区の一等地の不動産を購入したことが判明したばかりだ。冷静時代、東西両欧州の掛け橋的な地位にあったウィーンには多くのロシア人外交官やメディア関係者が情報員として働いていたが、冷戦の終焉後は、彼らに代わって石油ビジネスで大富豪となったロシア人ビジネスマンが不動産売買や投資で進出してきている。
 共産党独裁国家の中国でも資産1億円以上のミリオネアーは35万人以上いると推定されている。旧ソ連・東欧共産政権時代、“赤い貴族”と呼ばれて批判されてきたが、中国では今日、共産党幹部たちが会社社長の名刺を党員のIDカードより重視する時代となってきたのだ。
 ところが、最貧国だったスーダンにも最近、ミリオネアーが出現したという。今世紀最大の悲劇といわれるダルフールの難民の映像だけを観てきた読者は、スーダンにもミリオネアーが存在するとは考えないだろう。しかし、ここでは英国の詩人バイロンの「事実は小説より奇なり」という言葉を思い出して欲しい。同国にもミリオネアーが存在するのだ。
 首都ハルツームの百貨店を独占しているのは数人のスーダン実業家だ。彼らは欧州でもなかなか見られないほどの豪華絢爛な別荘を所有している(ちなみに、スーダンでは通常、1日5ユーロ、月200ユーロの収入があれば生活できる)。
 それでは、最貧国の同国で如何にしてミリオネアーが生まれてきたのかをここで少し説明する。同国で数年前に石油資源が見つかった。砂糖にアリが集まるように、中国企業が石油の利権や開発権を独占するためにスーダンに進出してきた。中国の投資を受け、スーダンの石油産業は今日、日量50万バレルの生産量を誇っている。石油輸出国機構(OPEC)の加盟は時間の問題と見られているほどだ。
 その中国人ビジネスの窓口となったスーダン人がミリオネアーとなっていったのだ。石油開発の利権を獲得したロシア人ミリオネアーや共産党政権との癒着や人脈を利用して富を積んでいった中国人ミリオネアーとは異なり、スーダンのミリオネアーは対中国ビジネスを通じて富を積んでいった人々だ(ハルツームには多数の中国人ビジネスマンが働いている。スーダン人女性と結婚した中国人もいるほどだ)。

 この話をしてくれたスーダン出身の知人は最後に、「中国ビジネスマンはその事業を成功するためにあらゆる手段を駆使していった。わが国に賄賂や腐敗といった悪の習慣を植え付けたのは彼らだ」と嘆いた。