新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。

 今年最初のコラムを国連記者室に屯(たむろ)している記者の1人として、国連機関の話から始めたい。
 ウィーンに本部を置く包括的核実験禁止条約(CTBT)機関は今年で条約署名12年目を迎える。国連総会で1996年9月、署名が開始されて以来、2007年12月末現在、177カ国が署名、141カ国が批准を完了する一方、条約発効に批准が不可欠な44カ国中(研究用、発電用の原子炉を保有する国)34カ国が批准を終えたが、10カ国が未批准だ。
 具体的に国名を挙げると、エジプト、中国、コロンビア、インドネシア、イラン、イスラエル、米国、インド、パキスタン、北朝鮮の10国である。インド、パキスタン、北朝鮮の3国は署名もしていない。
 44カ国で最後に批准を完了した国はベトナムで2006年3月10日だ。すなわち、21カ月以上、新しい批准国が出ていない、ということになる。
 CTBT暫定技術事務局の議長国を日本が務めていた時、日本の高須幸雄大使(現駐ニューヨーク国連大使)は「自分の議長時代に44カ国の未批准国数を一桁にしたい」と記者会見で決意を表明したが、10国が依然未批准国に留まっている。高須大使の願いにもかかわらず、一桁の壁は厚いのだ。
 中国は「批准プロセスは現在、議会で進行中だ」と表明して久しいが、批准していない。中国は米国の出方を注視しているところだろう。トット事務局長は昨年の記者会見で「インドネシアの批准は時間の問題だ」と予想する一方、「インドとパキスタン両国は相手次第で署名・批准をする用意がある」と受け取っている。
 北朝鮮の場合、「CTBT条約の加盟は基本的には問題がない」と表明してきた。6カ国協議の進行如何で案外、早期に署名する可能性は排除されない。平壌指導部にとって、CTBT署名・批准は交渉カードの一つだ。
 CTBT早期発効の最大の障害は米国だ。ジュネーブの軍縮会議でCTBT条約の作成の原動力となってきた米国は署名をしたが、批准を否決している。ニューヨークで開催された国連総会第一委員会は昨年10月31日、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を促す決議案を採択した。票決内容をみると、166カ国が賛成、棄権は4カ国(コロンビア、インド、モーリシャス、シリア)、反対票はなんと米国の1国だけだったのだ。
 米国は今年、大統領選の年を迎えることから、新大統領が選出され、政情が落ち着くまでは政策の大きな変更は考えられないだろう。欧州の加盟国関係者は「米国が批准すれば、後の未批准国もその後を追って批准する」と指摘、米国の早期批准に大きな期待を寄せている。