ロシア正教は今年1年間で首都モスクワで100以上の新しい教会、会堂などを開いた。昨年末までモスクワには730の正教建物、会堂があったが、その数は今年末現在、851に拡大したという。これはロシア正教の最高指導者アレクシー2世がこのたび明らかにした数字だ。ロシア正教がプーチン大統領時代に入って、急速に勢力を拡大し、それに伴い政治的影響力をも回復してきたことが教会数でも明らかになったわけだ。
 バチカン放送によれば、1917年のロシア革命前は、ロシア正教は全土で97000の教会、修道院1500、57の神学校があったというから、ロシア正教は依然、革命前の勢力からは程遠いのであるが。
 興味深い状況は、ロシア正教の勢力圏拡大時期とプーチン大統領政権時代の8年間が重なることだ。プーチン大統領はロシア正教を積極的に支援し、国民の愛国心教育にも活用してきた。実際、プーチン大統領は教会の祝日や記念日には必ず顔を出し、敬虔な正教徒として振る舞ってきた。
 そのプーチン大統領が12月、メドベージェフ第1副首相を後継者に推薦すると、真っ先に支持声明を表明したのはアレクシー2世だった。そして同副首相が「プーチン大統領の政治手腕をロシア国民のために生かしたい」として、同大統領を首相に選出する意向を公表すると、アレクシー2世は「プーチン大統領とミドベージェフ副首相のコンビはロシアの祝福だ。これでプーチン大統領の政治が今後とも継続されることになる」と全面的な支援を約束しているほどだ。
 考えてもらえばいい。ローマ・カトリック教会最高指導者ローマ法王ベネディクト16世が出身国ドイツの政治やバチカン法王庁のあるイタリアの政界について、アレクシー2世のように特定の政治家を支持声明することはない。同2世の支援声明は宗教指導者としてはまったく異例のことだ。それだけ、ロシア正教指導者はプーチン大統領に入れ込んでいるわけだ。ロシア正教指導者とクレムリンの主人は現在、失った大国復活を目指して運命共同体の状況ともいえる。