韓国の盧武鉉大統領は10月2日から4日、北朝鮮の金正日労働党総書記と南北首脳会談を行うが、訪朝時に北朝鮮のマスゲーム公演「アリラン」を観覧すべきかどうかで韓国内で是非の議論が湧き上がっている。
 韓国の統一部の李在禎長官は「両首脳が一緒に観覧すること自体、世界への平和メッセージとなる」(中央日報)と強調し、観覧に積極的な姿勢を見せた1人だ。大統合民主新党のペ・ギソン委員などは「北朝鮮で見たアリラン公演は、オペラの『アイーダ』に劣らぬ感動を与える作品だった」と称賛し、「アリラン公演は民族の大叙事詩で、世界のどの国もなし得ない大型ミュージカルショーだった」(朝鮮日報日本語版)と主張しているほどだ(同委員がアリランを評価するためにどうしてジュゼッペ・ヴェルディ作曲のオペラ「アイーダ」を挙げたのかは分からない)。
 それに対し、野党のハンナラ党は「アリランは体制宣伝であり、それを観覧することは北朝鮮の独裁体制を支持することになる」と批判してきた。特に、児童・生徒たちはマスゲームのために長期間、1日に10時間以上の過酷な訓練を受けているとされ、人権蹂躪ではないか、といった批判は根強い。
 一方、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は「アリラン公演には金総書記の統一への意思が盛り込まれている。アリランは金総書記の作品である」(連合ニュース)と強調している。
 朝鮮日報の説明によると、「アリラン公演」は2002年、北朝鮮が故・金日成主席の生誕90周年に合わせ、体制宣伝と国民の団結を目的として考え出したマスゲームだ。ちなみに、人文字などを描く為に約10万人の児童、青年たちが動員される「アリラン公演」は最近、世界最大のマスゲームとしてギネスブックにも記載されたばかりだ。
 韓国側としては故金日成主席の遺体が安置された錦繍山宮殿の参観を断る代わりに、北朝鮮が求めるアリランの観覧は受け入れるべきだ、といった実務的な意見が案外強い。
 以上、韓国日刊紙の報道を引用して伝えた。いずれにしても、「アリラン」を金総書記の傑作品としてオペラ「アイーダ」に匹敵する芸術作品と評価するのは少々、乗り過ぎと思うが、独裁国家・北朝鮮でしか実現できないスケールとその異様な規律性は、観覧する者に衝撃を与えることは確かだろう。