国際原子力機関(IAEA)の第51回年次総会が17日から21日までウィーンの国際会議場で開催され、加盟国144カ国から多数の代表団が派遣された。イランのアガザデ副大統領、韓国の金雨植副首相兼科学技術相をトップとすれば、ハンガリーを含む数カ国が外相を派遣した他、閣僚として多数の科学技術担当相が参加した。
 ところで、軍最高幹部出身の科学技術相が参加していたことは余りというより、まったく知られていない。スーダンのアブデル・ラーマン・サエト科学技術相は閣僚入りする前は軍最高幹部の1人であった。もともと生粋の軍人だ。
 スーダンの知人によると、同国の組閣ではどの分野の出身かは余り重要視されない。全ては政治的に決定される。人物の資質や専門分野などは問題視されないという。南北和平合意に基づき、閣僚数は南北間で分割されたが、現閣僚の多くはその資質や専門職とは余り関係のない分野の閣僚に就任しているという。軍最高幹部のサエト氏の科学技術相就任も典型的なスーダン流人事という。知人曰く「彼は軍人であり、科学技術分野とはまったく関係がない人物だ」と指摘した。
 当方が「軍部出身」に拘るのはそれなりの理由があるからだ。イランの核関連施設が軍部の管轄下にあった、ということが発覚した時、欧米諸国はイランの核計画が核エネルギーの平和利用ではなく、核兵器製造を目的としている、といった批判を強めていった。この例でも分かるように、核エネルギーの平和利用を掲げる核計画に軍部が関与することは余り好ましくないからだ。
 スーダンが核兵器製造計画を保有しているとは思わないが、核分野を管轄する閣僚に軍最高幹部が就任したという事実は誤解を生み出すことにもなる。スーダンはもう少し政治的デリカシーを有するべきではないだろうか。
 ちなみに、同相は年次総会の一般演説で中東地域の非核化構想を支持すると共に、イランとIAEA間で合意した「行動計画」を評価する一方、核エネルギーの平和利用に強い意欲を示した。